あなたを好きな証 | ナノ





04






耳障りのいい言葉よりも

貴方が示してくれた愛情だけが真実でした



















「雅楽…バカ…?」

「おまっ!瑠禾、誰に言ってんだよ!」

「だから、雅楽…」



はぁっと息を吐き、冷たい視線を俺に向ける



「花蓮がボーカルやるなんて聞いてない」

「…嫌なの…か…?」



二人しかいない放課後の音楽室に沈黙が走る



「花蓮はボーカリストとしては…いいと思う」



伏し目の瑠禾がポツリとこぼす



「ただ、雅楽と付き合っている限り甘える。雅楽も甘やかす…。俺達のバンド活動の妨げになる」



瑠禾の言う事は、俺自身もっともだと思った

だけど…

瑠禾をバンドに誘った時と同じ様に、花蓮とも一緒にやりたいと思った

そして…

俺のギターでアイツに歌ってほしいんだ



「約束…して…」

「…約束…?」



うん、と頷く瑠禾が条件に出したのは…

バンド内に私情を挟まないこと…

ただ、これだけだった



「サンキュー、瑠禾!」



この時の俺は、瑠禾が花蓮を認めてくれた嬉しさでいっぱいだった


















「…え…瑠禾って反対してたの…?」



雅楽の口から聞いた衝撃の事実

確かに雅楽は瑠禾と仲はいいけど、私はそれほどでもなかった

だけど、部活で切磋琢磨して…って、そう思って近づいた気でいたのは私だけだったんだ

だけど瑠禾は、ボーカリストとしての私を買っていると雅楽が言う

ホントだったら…素直に嬉しい…



「バンド名は?何にする?」

「もう決まってる!トロイメライ!」

「…あ…」



瑠禾が弾いていた曲のタイトル…



「バンドなのに…クラシック…」



そのギャップがいいんだと、雅楽が力説する


雅楽は、瑠禾に居場所を与えた

直感でそう感じていた



「…私の意見は聞いてくれないんだ…」



少しムッとして、雅楽に背中を向ける


…わかってる…

雅楽は優しいから

私を背中から抱きしめてくれる



「…怒んなよ…」



耳元で囁く彼に拗ねた声を出す



「…だって…」



口を尖らせると、雅楽の腕に力が篭って

雅楽は私の事が好きなんだと感じる瞬間…

彼の顎が私の肩口に置かれると、体を反転させて彼の顔を覗き込む

頬も耳も首まで真っ赤になった雅楽が呆気にとられて



「雅楽!か〜わい♪」



彼の唇にチュッとリップ音をさせて離れた

キザな言葉も雅楽は面と向かって言えないから…

絶対に真っ赤になる

瑠禾の言いたい事はわかる

彼は、本気でプロを目指している

私は携帯を取り出して電話をかけた



「…あ、お兄ちゃん?」



















「何…?ここ…」

「そろそろ教えてくれてもいいだろう、花蓮…」



二人を連れてきた、とあるスタジオ

そこで待っていたのは



「お兄ちゃん♪」

「来たな!女子高生…」



キョトン顔の二人に私は兄を紹介した



「こっちも遊びじゃないからな…今日は実力のほどを見せてもらおうか…」



兄はインディーズバンドでギタリストだった

今は…芸能事務所を立ち上げてアーティストのタマゴを発掘している



「ふぅ〜ん、七光…」

「…いいじゃない!七光もあるだけいいと思うけど?」


「おいおい、まだお前たちをデビューさせる話にはなってないぞ…」



私たち3人は個々に音を聞いてもらい最後には兄が用意したサポートメンバー、ドラムスとベースを加えて音を披露した






「お兄ちゃん、どうだった?」



息を弾ませ、自分なりの満足のいく結果に期待を膨らませるばかりだった



「…うん…まぁ、ドラムとベースを加入させないとな…」



雅楽と顔を合わせて抱き合った



「やったー!一歩前進♪」

「瑠禾!おい、瑠禾!」



普段の瑠禾からは想像も出来ないような表情で兄を見つめてる



「…俺たち、デビュー…できる…?」



小さく、あぁと頷いた兄の前で薄く笑った瑠禾は本当に嬉しそうで…

とても印象的で…

私はこの時の瑠禾の表情を一生忘れる事はなかった



















スタジオを出る時、後ろに引っ張られるような感触に違和感を覚え振り向くと

私の制服を握った瑠禾に驚いた



「ど…どうしたの…?」

「…ありがと…」

「…え…?」



空耳かと思うような小さい声で瑠禾の言った言葉の意味を

この時は、ただ単純にプロになれるのが嬉しかったからだと思っていた


強い意志があったなんて知りもせずに…

だから…

瑠禾は私を許さない…












‐04‐end

2011.05.30

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