あなたを好きな証 | ナノ





03





愛しいと感じた

温かかった

その瞬間だけは嘘ではなかった…




















思わず教室を飛び出し、私が向かった先は…

屋上…


無我夢中でどこをどう走ってきたのかさえわからない

雅楽との約束でタバコはやめていたのに、私は呼吸する事さえも困難な状況に困惑し、隠していたタバコに手を伸ばす

火を点けようとして…

点ける事ができなかった…


雅楽から告げられた



「瑠禾とバンド組む」

「そして、プロになる」



この言葉が私の頭の中で渦を巻いている


…そこに…私は…いない…


火を点けなかったタバコを震える指で押し戻し…空を仰ぐ

私の心とは裏腹に澄み切った空は余計に私を惨めにさせる

やっと見つけた居場所は…

マイクの前で

雅楽の隣だったのに…

プロになりたいと言った彼はキラキラしていて、いつか私もと同じ夢を描いていた

隣にはギターをプレイしている雅楽がいて…

雅楽のギターで歌う私の姿を思い描いていたのは…

…私だけ…



「花蓮!!」



屋上に響き渡った彼の声にハッとして、体がビクンとはねる

急いでタバコを元置いていた場所に隠し、柱の陰に身を潜めた

急に足元が陰り、息を切らした彼の声が私の耳に届く



「…何で、急に出て行ったんだよ…」



雅楽の低い声にドキリと心臓が音を立てる



「…呼び止めたのに…何で無視すんだ…」




顔を彼から逸らし



「…私って…雅楽にとって何なの?」

「は?…意味わかんね…分かるように説明しろよ」



雅楽が私の手首を掴む



「…私にとって雅楽は特別…でも、雅楽にとっては違う…」

「どういう意味だよ!…俺たち、付き合ってんだろ!」

「私は…」



その先の言葉を紡げなくなった

悲しみの塊が押し寄せてきて、今口を開くと…泣いてしまいそうだったから…

グッと我慢をしてると、自分でも気がつかないうちに握った拳が震えていた

雅楽が掴んでいた手を離すと、私を正面から抱きしめる



「…俺にとっても、花蓮は特別…」



低い声だけど、私の心にしっかりと届く芯の通った言葉

だけど…

だけど、雅楽は…



「でも…私より…瑠禾を…」



言葉を続けられなくて、抱きしめてくれる雅楽の背中に腕を回す事もできない…

私は…素直じゃない…



「なんでそこに瑠禾が出てくんだよ!」



雅楽の腕に力がこもる

今、この世界に私と雅楽…二人だけだったらいいのに…

そんな少女漫画の台詞みたいな事を考えている

雅楽に恋をして、私は自分が女の子で良かったと本気で思っていた

体を少し離し、彼の目を見据える

雅楽の綺麗な瞳には…私が映っている



「瑠禾とバンド組むんだよね…?」



あぁ、と頷く雅楽



「瑠禾と…プロになるんだよね…?」



今度は言葉も無く頷く



「そこに私は…いない…」



そう告げた時、急に雅楽が笑い出した



「なっ…お前が怒っていた理由ってそれかよ!あははははは」



私が落ち込んで、悩んだ事を笑い飛ばす雅楽…

沸々と怒りが込み上げてきて両手で彼の体をドンッと押しのける


ムカつく…

何であんなに笑うの、雅楽は…

怒りで話す気にもならない


さっきまで泣きそうになっていたのに、涙は一気に引っ込んでしまった



「最後まで、話聞けよ」



彼の言葉に屋上から出て行こうとした私の足が止まる



「バンド組むっつったよな?…俺…」



雅楽から離れたのに、彼の声が近づいてくる

だけど…

私はそこから動けずにいた



「プロになるとも言ったよな…」



彼の声は私の真後ろから聞こえて…

背中越しに雅楽を感じていた



「バンドったって、ボーカルがいないと話にならないよな?」



雅楽はそう言うと私の前に立ち、顔を覗き込んできた



「…お前がいないと、意味がねぇんだよ…」



雅楽の指が私の髪をかきあげ、両手で頬を挟み私の顔を上に向かせる

さっきと変わらない雅楽の瞳に映る私…

雅楽が頬を真っ赤に染めて、私を潤んだ瞳で見つめてる



「…雅楽の…ギターで…歌いたい…」



雅楽に吸い込まれるように自分から唇を重ね、彼の首に腕を回した

さっきまでの怒りがドンドン治まっていき何度も好きと呟いた

その度に彼は私の唇を声ごと塞ぐ

雅楽が瑠禾にボーカルの事を話してないなんて事をまだ知らずに…

雅楽の熱と溶け合った













‐03‐end

2011.05.09



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