あなたを好きな証 | ナノ





02



愛しいと思う心に極限はなく

ただ、あなたは私を逃げようのない愛へと誘っていく






















ひねくれた性格のせいなのか、私は自分の感情をうまく人に伝える事が出来ない

人に合わせるとか、空気を読むとか…

私には出来ない事

我が儘でもなんでも…これが、私…

似ているようで

ちょっと違う 葉山瑠禾

彼は私とは違い感情をストレートにぶつけてくる


真逆にいるのが…雅楽…

ただ、極端に照れ屋なだけ…





「花蓮、この音出る?」





瑠禾は容赦ない…





「ちょっときつい…」

「音を下げたら、曲のイメージ変わるから出して」

「瑠禾!もっと言い方あるだろ」

「……」





音楽の事になると、絶対に引かない





「どうしても出ないの?」





大きな黒い瞳に見つめられると、出ないと言えなくなる





「出る!…ていうか、出す!」

「花蓮!!」





挑戦的とも言える瑠禾の挑発する言葉にいつも乗せられてしまう

だけど…

瑠禾の課題をクリアーすると、鋭かった彼の眼差しが少し和らぐ

音楽で認められたと思う瞬間…

自分の存在意義がここにあると安心し、少しずつ自信になる





「すんげー練習したんだろ?」





雅楽が自分の事のように喜び、頭をポンポンと撫でて微笑んでくれる





「そりゃあ…」





自分の努力を認めてもらえたのになんだか恥ずかしくて、それ以上の言葉が出てこなかった


ここには、私の居場所がある…

認めてくれる人がいる

私にも出来る事があるんだと、初めて自分の可能性を信じようと思った





















「お兄ちゃん!」





家を出ている兄が帰ってきた





「おかえり、女子高生」

「何、ソレ…」





親の期待に応えなかった兄…

家族の空気を読み取ったからなのか、あまり家には寄り付かない

…だけど、私の様子を見にフラッと立ち寄る事がある





「今日はどうしたの?」




















ある日の放課後、音楽室の近くを通り掛かった時にピアノの音色が聞こえてきた

滑らかに奏でられたその音は、とても澄んでいて

音に導かれるようにして、私は音楽室の前に佇んだ


クラシックを奏でている

堅苦しい感じではなく、柔らかくて、弾き手に愛情すら感じる

そんな音楽だった


誰が弾いているんだろう…

扉はほんの少しだけ開いていて…

そこから中を伺う





「…っ!…雅楽…?」





ピアノに一番近い席に座り、ピアノに背を向けている

びっくりした…

だったら…ピアノを弾いているのは…きっと…


その時、ピアノの音が止む…





「…花蓮…?」

「!!」

「あ?…花蓮…?」





どうして私が聞いている事がバレたんだろう





「……」





無言で中に入ると、目をパチクリさせた雅楽と視線が合う





「ホントに花蓮がいた…瑠禾!お前すげぇな…」





ピアノを弾いていたのは瑠禾だった

何となく納得をしてしまう自分がいる





「ここに写ってたから…」





そう言ってピアノを指差す

なんだ…と、雅楽が微笑む





「今のって、なんて曲?」

「…トロイメライ…」





そんなタイトルだったんだ

クラシックを真面目にやっていたんだと、私でもわかる

だけど、瑠禾の表情は冴えなくて…

彼を見ていた私の視線に気がついた瑠禾は表情をフッと和らげる




「…瑠禾は…」

「…何?」





私の中で瑠禾は遊びで軽音部にいると思っている

雅楽は…以前、私にこっそりと教えてくれた


プロになりたいと…





「…音楽は好きだけど、クラシックは嫌い…」




トロイメライを弾き、そう言った瑠禾の事を私は理解することが出来なかった

でも…

雅楽の表情は、瑠禾の何もかもを知っているかのように余裕すら感じる





「瑠禾と、バンド組む」





突然告げられた雅楽の決意…





「そして、プロになる!」





私はかやの外だったとわかり、気がつけば教室を飛び出していた













‐02‐end

2011.03.21

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