濁った水の中でショートしたときのようなぱちぱちとした小さな光が幾度も幾度も弾けた。そんでもって体のあちこちが痛い。たとえるならあれ、わたパチを全身に浴びせられたみたいな感じ、むず痒いような痛み。

「あっ」

心臓が急にばくばくして、遅刻に気づいたときみたいな焦りを背中に感じながら私は目を覚ました。目が疲れてるのかな、暫く光が強すぎて何もかもぼんやりとしか見えなかった。その間、四肢にはわたパチの痛みがまだ這っていた。その痛みを追うように両腕を眺めると、アンドロイドのように白い腕…、



「起きたかい」

白い腕、の輪郭がはっきりとしてきたころ、左側から声がした。
聞きなれない生意気そうな少年の声、なめたような顔で振り返ると、怪しい風貌の赤ん坊が座っているだけだった。
まだ痺れるような痛みを持ったまま、体を起こして部屋を眺めてみる。


明らかに私の家じゃない、知っている場所じゃない、なにここ


「ここどこ…」
なにこれ、夢?、にしては妙にリアルだしさっき目覚めたしな…、と馬鹿みたいにきょろきょろしているとまた左から声がする。
「まずは君に感謝の意を述べよう、ありがとう、いいサンプルだった」

振り返っても赤ん坊しかいない。一体どこから声が聞こえてくるのか。

「自覚はないかもしれないけど、君は一回死んだのさ。でもね、「死」といってもその状態には何種類もの名前が付いていて、君は「心臓死」、つまり血液の循環だけが止まってしまった状態だったんだ。まあ、僕らの仕事上そんな死に方をする人間が身近にいなかったからね、利用させてもらったまでさ」

よく見ると赤ん坊の口が動いている。もしかしてロボット?ベッドを降りて好奇心のまま頬をなでてみる、ふわふわのつるつるだ!

「ム、請求書を受け取る覚悟はあるのかい」
「せ、請求書?」
「僕とのスキンシップは高くつくよ」

はじかれたように右手を引っ込める。どうやら喋っているらしい。

「新しい体はどうだい、元のものより数段いい皮膚をしていると思うけど」
「は?」











妙に白くなった私の腕、というか私の体は、どうやら「取り替えられた」ものらしい。ってことはアンドロイドっぽいと思ったあの印象は間違っていなかったわけだ

……じゃねえーよ嘘だろアンドロイドとかスマホの間違いだろまだ義足だって義手だって開発中の世界じゃんそんな全身とっかえるとかSFみたいなこと言わないでよ!!

「いくら世界がグローバル化したからって君ごときに世界の技術革新の何が分かるっていうんだい」
「じゃあ君は私のしんじゃいたい気持ちがわかるっていうの?」


訊かれて赤ん坊は馬鹿にしたように笑って、「僕は「君」じゃない、マーモンだ」とだけ言った。



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