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時間の感覚がない。こんだけごっちゃだと、時計も探さなきゃ見つからない。し、集中すると余計に。一日中籠っちゃう気持ちわかる。

「結構良い出来では?」
「上手いもんだな」
「ふふ、ありがとうございます」

表に名前。裏に文字。“開けるな危険”て。我ながら良い出来だと思うんだけど。本当は鑢かけたい。ニスとかもしたい。

「あっ、モビーだ!」
「わかる?」
「わかる!すごいじゃん!イズって実は器用なんだね!」

作業を終えたのか、止めたのか。リノンが覗きに来た。実は器用なんです。いや、そんな大層なもんじゃないし。

「リノンには敵わないけど」
「おれはこんなこと思いつかないよ!」

まあ、そりゃ日頃から武器ばっか改造してればね。わたしだって、傘開けたら刃物が飛んでくなんて考えつかない。

「これ、おれに頂戴?」
「とうぞ?リノンの名前で作っちゃったし」
「開けるな危険だって。面白い!ありがとう!」

気に入ったんなら良かった。暇潰しだったんだけど、思いの外真剣になっちゃった。お腹空いた。

「あ、これあげる」
「…何、これ?」
「見ててね」

何か、四角い箱。掌サイズの。リノンが手の中に入れた瞬間、何か飛び出した。全然見えなかったけど。どこに何が飛んでったの。

「…おれに向けんな」
「ちょっと手順は面倒だけど、これなら奪われても大丈夫だと思って!」

反応したイゾウさんもすごいけど、何事もなかったように解説を始めるリノンもすごい。駄目だよ、人に向けちゃ。危ないでしょ。

「…これ、さっきの?」
「そう!確かに刃が外にあったら危ないかな、と思って。これは三つまでしか入らないけど。ここをずらして、こうすると、」

また刃物がひゅ、と飛んで、扉に刺さった。結構速いよ?風切る音がするもの。仕組みとしては、秘密箱みたいな感じ。

「これならイゾウ隊長もOKしてくれるんじゃない?」
「イズルじゃ開けられねェと思うけどな」
「簡単だよ?」

受け取った箱を片手で取り回す。わかるよ?仕組みはわかる。けど、…固い。

「…リノン、無理かも」
「えっ、本気?」

両手でやったら開くけど。これ片手はちょっと無理。寧ろ何で片手で開くの。

「イズって本当に非力だね」
「普通」
「んー…そっかー、開けらんないかー。いい考えだと思ったんだけどなー」
「飯行くぞ。腹減った」
「あ、おれも」

わたしも。だって今何時?三時回ってない?今から行って、食べるものあるの?



***

「何だこれ。開けるな危険?」
「開けなくても危険だが…これ作ったの誰だ?」
「お、裏はモビーと名前が彫ってある」
「中々良い出来じゃねェか。おれの分も欲しいくらいだ」
「イズが作ったらしいぞ」
「へェ、器用だな。頼んだら作ってくれねェかな」
「やめとけ。イズに全員分作らせる気か」
「…1,600は、大分きついな」




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