02


「あ、ロハンさん。何かやれることありますか?」
「メリオさん、これここに置いときますね」
「リタさん、お隣空いてますか?」

生きていくうえで必要なもの。それは強靭な肉体だとか、生命力とか、サバイバル方法とかじゃない。如何にして敵を作らないか。それに尽きるんじゃないかと思っている。
勿論、全ての人間に好かれるなんてできっこないし、一定割合の人間は問答無用でわたしを嫌う。何割だったか忘れたけど。只、それと生きる死ぬは別だ。好き嫌いはあんまり関係ない。

とは言っても、それは社会に於ての話であって、もし無人島で生きていかなきゃならないならサバイバルスキルが必須になる。…無人島で下ろされたら死ぬな。

「イズは働き者ね」
「お世話になってる身ですから」
「ふふ、それでも助かるって言ってたわよ?」
「お役に立ててるなら何よりです」

幸い、この船は社会の一種だ。敵を作らない為にはコミュニケーションがものを言う。媚びるわけじゃない。只、何かしらいいやつだと思ってもらわなくちゃ。例え紙一重の厚さがなくても。適度に、満遍なく、人懐っこく、無害そうに。相手に不快感を与えないこと。そうすれば、対人関係は大体何とかなる。

「イズ!ちょっとこっち手伝ってくれ!」
「はあーい」

ここに来て三日だか四日だか経つけれど、それは概ね上手くいっている。筈。殺されそうにはなってない。わたしのできることなんてたかが知れてるけど。洗濯も掃除も繕い物も、ここの誰よりできないけど。それでも、精一杯やって見せれば意外と人は満足するのだ。



***

「あれがマルコの言ってたやつか!」
「そうらしい」
「へェ…思ったより、随分小せェな!まだガキじゃねェか」
「ふふ、人は見た目によらないぞ?」
「あ?」
「確か、22歳と聞いた。本当かどうかはわからないが」
「はあ?…いや、あれで22はねェよ。だって胸とか尻とか全然、」
「女性の価値はそれだけじゃないと思うんだが」




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