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連れていかれた部屋には、それはそれは背の高い人が座っていた。背が高いというか、でかい。決定打と言ってもいい。こんな大きな帆船があることも、当たり前のように武器を持っていることも、その考えに辿り着く要因ではあるけれど。 ここはわたしの知る、わたしの世界ではないらしい。 「何だァ?お前ェは」 「渡イズル22歳、東京出身の一般庶民です」 「おい、さっき言ってたのと違うじゃねェかよい」 「いや、大学生って通じないみたいだったんで」 一々説明しろと?やだよ。面倒くさい。 「あいつらが言うには、船内から出てきたっていうんだが…」 ちらりと寄越された視線に知らぬふりをした。 玄関を出たらあそこだったんです。なんて、聞かれない限り申し上げませんけど。信じていただかなくても結構ですけど。 高い位置から見下ろしてくる目はとても静かで、きっとこの人はわたしなんか簡単に捻り潰せるのだろう。あんまり痛い思いはしなくて済みそうだ。 「グララララ、面白ェ。お前ェ、行く当てはあんのか?」 「…いえ、たぶんないです」 「たぶんって何だよい。トーキョーってのは島の名前じゃねェのか?」 「東京は街の名前ですけど、…たぶん帰れないんで」 「だからそのたぶんってのは何なんだよい」 「絶対なんて言い切れるわけないじゃないですか」 何を仰るやら。わたしは元の世界の一割だって説明できないぞ。絶対。 「この船は海賊船だ」 「…はあ、そうなんですか」 「随分あっさりしてるねい」 「えっ、そうなんですか!?怖い!」 「嘘つけ!」 「…わたしの反応がご不満なのかと思って」 「随分と肝っ玉の据わった娘っ子だなァ」 にやりと細められた目に、曖昧に笑って返す。 そんなそんな。滅相もない。内心びびってますよ。殺されるかもって。その時はどうか一思いにお願いします。さくっと。ぺしゃっと。 「近くの島まで乗せてやる。お前ェが平気なら、なァ?」 「わたしより皆さんが嫌がるのでは?」 「…オヤジの言いつけなら、破るやつはいねェよい」 「…じゃあ、よろしくお願いします?」 近くの島だって。そこでどうしろと言うのか。 と言うか、例えばよろしくしなかったら、わたしどうなんの?選択肢なくない? *** 「そういうわけだから、お前ら変なちょっかいかけんじゃねェよい」 「部屋はどうすんだ?」 「ナースのとこだろ」 「近くの島って、航路はどうすんの?」 「航路は変えねェ。あんまり治安の悪い島で下ろすわけにもいかねェだろい」 「妙な素振りを見せたら?」 「…そん時はわかってんだろい」 |
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