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今日のお昼ご飯はオムライスだった。サッチさん特製。めっちゃ美味しかった。普段だと大勢いるからできないけど、こういう人の少ない時はちょっと凝ったものを出してくれるんだって。少ないって言っても、百人単位でいるんだけどね。麻痺してるよ。

午後。薄暗い倉庫に灯りを持って入る。灯り持ってるのわたしじゃないけど。この辺に来たことはあっても、灯り持って来たことはないな。長居しないし。

「足元気をつけな」
「はあい」

イゾウさんの後について扉の中に入る。所謂武器庫。わたしが頑張るにしたって、素手じゃあ無理だもんね。
奥の方は、薄暗いと言うより暗い。そして全体的にごちゃごちゃしている。

「…ここも一回片さねェと駄目だな」
「わたしやりましょうか?」
「馬鹿。こんな所に一人で来るんじゃねェよ」
「…何回か来てますけど」
「は?」
「補修の木材取ってきてくれって。もうちょっと手前のとこの」
「…あいつら」

ありゃ、駄目だった?触っちゃいけない物でもあった?基本的に目的の物以外は触ってないけど。

「次頼まれたら他の奴にやらせな」
「何か触ったらまずいものとかありました?」
「違う」

奥の方で、箱を開けたり閉めたりしていたイゾウさんが戻ってくる。え、何。幽霊でもいるの?正直今はイゾウさんの方が怖いけど。何かえらい苛々してんなあ。
顰めっ面のまま、イゾウさんの手が腰に回る。え、ごめんなさい。何。言葉で言って。

「こういう状況になった時、ちゃんと逃げられんのかよ」
「…なるんですか?」
「ならないって言えんのか」

…言えるけど。言ったら怒られそうだなあ。ある意味現状なってるわけだから、否定もしにくいっちゃしにくい。んー…正直に言ってさ?あんだけスタイル抜群の姉さんたち見てたら、その辺の女の子なんか眼中にないよ?成程確かにわたしは女児だなって思うもん。

「ならねェと思ってんだろ」
「顔に出てました?」
「お前、この船が野郎ばっかだってわかってんのか?」
「いや、わかってますけど…あんまり現実味がない…?です?」
「あァ、そりゃ不幸中の幸いだな」

あ、怒った。手が離れて背を向ける。そんなんで怒られても…生まれてこの方、そんな経験ないもの。

「なら、わかんなくてもいい。この辺に一人では来るな。どうしても用があんなら呼べ」
「イゾウさんはいいんですか?」
「おれは自制が効くからな」

何そのおっかない単語。自制してんの?現在進行形で?

「イズル、銃とナイフ、どっちがいい」
「…たぶんどっちも大して使えませんけど、強いて言うならナイフですかね…?包丁は使えるので」
「銃は触ったことねェか」
「ないです。玩具のやつくらいしか…」

イゾウさんが引っ掻き回している箱の中を覗く。随分色々…雑多だなあ。刃物と火器くらい分けたらいいのに。それかサイズ別?

「…おれが言ったこともう忘れてんだろ」
「はい?」
「…ったく、自覚がねェ方が怖ェってのは本当だな」

何さ。自制が効くって言ったのは自分じゃないか。大体、近づこうが近づくまいがあんまり危険度変わらないじゃん。それならわたしだって見たい。わたしが使うものなんでしょ?



***

「おい」
「あれ、イゾウ隊長。珍しいっすね。何かありました?」
「イズルに倉庫まで行かせただろ」
「あー…えっ、と…はい。何度か」
「二度とやらせんな」
「うっ、すいません。何かできることないかって言うもんだから、つい…」
「ついじゃねェ。次はねェからな」
「はいっす!すいません!」
「イゾウ隊長も過保護だね」
「ありゃ過保護とは別のもんじゃねェか…?」




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