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いっぱい喋って、いっぱい食べた。いや、エースさんみたいな意味ではなく。わたしが食べたのはパフェ一つ分。その帰り道は運動しろ、ということだろうか。思いの外、自分が冷静でびっくりした。 街並みが切れて、人気が薄れた頃。ぐるりと周囲を囲む見知らぬ方々。…確かに、ちゃんと顔を覚えてない兄さんも、かなりいっぱいいるけども。そうじゃなくて。 「待ってたぜ。白ひげ海賊団」 「一人でこの人数相手にする気か?」 「雑魚が何人集まったって一緒だろい」 「イズ、わたしたちから離れちゃ駄目よ」 「はあーい」 リリーさんに言われて、四人でくっつく。白ひげ以外の海賊を、初めて見た。何というか、醜い。贔屓目だろうか。兄さんたちも、よくにやにや笑ってるけど。 後ろで、かと思えば横で、色んな音がする。何かがぶつかる音から、人の呻き声、発砲音。全然目では追えないけど。気がついたらそこにいたのがいなくなってて、土煙が上がっている。 「流石に強いな。だが、守りが疎かになってるぞ?」 いつから。どこから。知らないうちに、男が一人立っていた。片手に持ったサーベルを舐め、濁った眼で見下ろしていた。…主観ね。わたしの主観。でも、そんなことしたら刃が傷むと思う。 咄嗟に手が出た。伸びてきた浅黒い肉が、ぱちんと音を立てて目的から逸れる。何に、触ろうとしてるの。その汚い手で。 「何だてめェ、このおれと殺り合おうってのか?」 「気安く触んな。礼儀くらい弁えろ」 「このガキっ、」 「イズ!」 男がサーベルを振り被った。背後にリリーさん。マルコさんは何処か知らない。引いて堪るか。こんな奴に。どっちにしたって動けない。 途端、視界一面に色がついた。金属と金属がぶつかる音と、銃声。リリーさんに腕を引かれて踏鞴を踏む。…イゾウさん?何やってんの? 「遅ェじゃねェかよい!」 「長兄一人で平気だと思ったんだがなァ」 「うるせェ」 後から後から兄さんたちが来て、一網打尽てこういう感じかなあ。暫くも経たずに屍の山ができ、…いや、いっぱいいるな。埃っぽい。 後片付けの指示を出して、イゾウさんが振り向いた。怒…ってる?あ、笑った。怒ってない。けど、頭を撫でる手がいつもより荒っぽい。何。何ぞ? 「あんまり無茶してくれるな」 「はい?」 「手ェ出すとは思わなかった」 「本当よ…もう」 「…つい?ごめんなさい?余計なことして」 「余計なことなんかじゃないわ。嬉しかった。けど、…寿命が縮んだわ」 「…じゃあ、わたしの分あげる」 「イズの?」 「まだまだ一緒にいたいもの」 そう言ったらリリーさんが抱き締めてくれた。何だか酷く安心する。体から力が抜けて、漸く緊張していたのを自覚した。…でも、今回は、今回だけは褒めてもいいと思うんだけど、どう? *** 「すぐ助けに来るかと思ったんだが」 「あんまり怯えてるようなら助けてやろうと思ってたけどな」 「けろっとしてたねい」 「おれはひやっとした」 「ああ…ありゃァ、中々の啖呵だったよい」 「本人はよく覚えてないんだとさ」 「あ?」 「ついかっとなっただけだから、何言ったか覚えてないんだと」 「…自覚ねェ方が余っ程怖ェな」 |
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