18


「あら、イゾウもいい仕事するじゃない」

わたしとしては文句を言った筈なんだけど、姉さん的にはご満悦らしい。部屋に帰ったら、小さい箪笥ができてた。どうも。ありがとうございます。

「流石に服だけね。下着はどうするの?」
「明日とかにもう一回見に行こうかと」
「あら、それなら一緒に行きましょう」
「リリーさんと?」
「ええ、リタもエルミーも一緒に」
「ふふ、楽しみ」

そんなわけで、今日は姉さんたちと街に降りた。マルコさんと、1番隊の何人かが一緒に。わたしは少し後悔している。

「こっちも似合うんじゃない?」
「これは?」
「これのサイズってあるかしら?」

わたしそっちのけで、姉さんたちは楽しそうです。何より。なんだけどさ。

「なんで私のサイズ知ってるんですか…」
「あら、毎日一緒にお風呂に入って、着替え見てたらわかるわよ」

エルミーさん談。やめて。そんな見ないで。

恥ずかしくなって店から出た。退屈そうに、やや気まずそうに、1番隊の兄さんたちが待っている。

「…終わったのか?」
「たぶんまだですけど…姉さんたちが張り切ってるから、もう全部任せようと思って」
「おう…お前も大変だな」

わかってくれる?というか、こんな店の前で待ってなきゃならないんだから、わたしよか大変よね。どんまい。

「イズ!いなくなっちゃ駄目じゃない!ちょっと着てみて!」
「えええ、もう任せます…」
「駄目よ!ちゃんと合わせてみないと!」

隣で兄さんが居心地悪そうに顔を赤くした。うん。ごめん。

連日リカちゃん。いっぱい着た。その上全部確かめられた。んで全部買われた。ありがとう。いっぱい愛されて嬉しい。
流石に持たせるのは、すごく、とても、めちゃめちゃ抵抗があったんだけど、リタさん曰く、荷物は男に持たせるものなんだって。ごめん。わかんない。

帰路につく前に、今日はお茶していくことになった。荷物を持ってくれた兄さん方は先に船に帰るらしい。ありがとう。持たせておいて申し訳ないんだけど、絶対開けんなよ。絶対開けんなよ!開けたらわかるからな!

「マルコさんは甘いもの好きなんですか?」
「いや、殆ど食わねェよい」

へえー。だと思った。けど、ならなんで一緒に来たんだろう。

「女子供だけで歩かせるわけに行かないからねい」
「子供ってわたしですか」
「さァな」
「あら、イズだって女の子よ。ちゃんと出るとこ出てるもの」
「元が小柄なのに、緩い服ばっかり着てるから」
「まァ、今日の恰好見てりゃわかるよい」
「やめてください」

親戚の集まりかよ。よく知らないけど。今日の服選んだの姉さんだし。そりゃ、わたしが選ぶ服とは違うでしょうよ。

「後で船長にも見せに行きましょ」
「ええ…やだ…」
「イゾウにも見せてやれよい」
「嫌です」
「あら、喜ぶんじゃない?自分が選んだ服だもの」

嫌だ。絶対嫌だ。何で態々。運ばれてきたパフェをつつきながら断固拒否する。美味しい。こういう甘いの久しぶり。ふふ。機嫌治るの早いなあ。
一口ずつ貰って、返して。コーヒーだけのマルコさんはやや蚊帳の外で申し訳ないけど、楽しい。

「マルコさんも食べます?」
「…おれかよい?」
「甘いの嫌いですか?」
「別に嫌いじゃねェが…」
「あ、無理して食べてもらわなくて大丈夫です。わたしが美味しくいただくんで」
「…食うよい」

あ、そう。まずいとか言ったらぶっ飛ばすぞ。

「…甘ェ」
「苦いって言われたらびっくりしますよ」
「イズったら優しいわね。わたしたちだったら絶対あげないもの」
「今日はそんな気分だっただけです」
「とか言って、次の時もあげちゃうんでしょ?」
「さあ?どうでしょう」
「ふふ、じゃあ特別な一口ね?マルコラッキーじゃない」
「そうだねい」

…そういわれるとちょっと。妙な含みがあって嫌だ。もうやんない。マルコさんにはあげない。



***

「なァ、あれイズだよな?」
「あ、本当だ。一緒にいんの…ナースたちとマルコ隊長か?」
「イゾウ隊長に知らせるか?」
「いや、マルコ隊長がいんなら別に…あ、」
「…今の見たか?」
「おれは見てねェ。何も知らねェ」
「そうだな。おれも、」
「何を見てねェって?」




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