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「あら、イゾウもいい仕事するじゃない」 わたしとしては文句を言った筈なんだけど、姉さん的にはご満悦らしい。部屋に帰ったら、小さい箪笥ができてた。どうも。ありがとうございます。 「流石に服だけね。下着はどうするの?」 「明日とかにもう一回見に行こうかと」 「あら、それなら一緒に行きましょう」 「リリーさんと?」 「ええ、リタもエルミーも一緒に」 「ふふ、楽しみ」 そんなわけで、今日は姉さんたちと街に降りた。マルコさんと、1番隊の何人かが一緒に。わたしは少し後悔している。 「こっちも似合うんじゃない?」 「これは?」 「これのサイズってあるかしら?」 わたしそっちのけで、姉さんたちは楽しそうです。何より。なんだけどさ。 「なんで私のサイズ知ってるんですか…」 「あら、毎日一緒にお風呂に入って、着替え見てたらわかるわよ」 エルミーさん談。やめて。そんな見ないで。 恥ずかしくなって店から出た。退屈そうに、やや気まずそうに、1番隊の兄さんたちが待っている。 「…終わったのか?」 「たぶんまだですけど…姉さんたちが張り切ってるから、もう全部任せようと思って」 「おう…お前も大変だな」 わかってくれる?というか、こんな店の前で待ってなきゃならないんだから、わたしよか大変よね。どんまい。 「イズ!いなくなっちゃ駄目じゃない!ちょっと着てみて!」 「えええ、もう任せます…」 「駄目よ!ちゃんと合わせてみないと!」 隣で兄さんが居心地悪そうに顔を赤くした。うん。ごめん。 連日リカちゃん。いっぱい着た。その上全部確かめられた。んで全部買われた。ありがとう。いっぱい愛されて嬉しい。 流石に持たせるのは、すごく、とても、めちゃめちゃ抵抗があったんだけど、リタさん曰く、荷物は男に持たせるものなんだって。ごめん。わかんない。 帰路につく前に、今日はお茶していくことになった。荷物を持ってくれた兄さん方は先に船に帰るらしい。ありがとう。持たせておいて申し訳ないんだけど、絶対開けんなよ。絶対開けんなよ!開けたらわかるからな! 「マルコさんは甘いもの好きなんですか?」 「いや、殆ど食わねェよい」 へえー。だと思った。けど、ならなんで一緒に来たんだろう。 「女子供だけで歩かせるわけに行かないからねい」 「子供ってわたしですか」 「さァな」 「あら、イズだって女の子よ。ちゃんと出るとこ出てるもの」 「元が小柄なのに、緩い服ばっかり着てるから」 「まァ、今日の恰好見てりゃわかるよい」 「やめてください」 親戚の集まりかよ。よく知らないけど。今日の服選んだの姉さんだし。そりゃ、わたしが選ぶ服とは違うでしょうよ。 「後で船長にも見せに行きましょ」 「ええ…やだ…」 「イゾウにも見せてやれよい」 「嫌です」 「あら、喜ぶんじゃない?自分が選んだ服だもの」 嫌だ。絶対嫌だ。何で態々。運ばれてきたパフェをつつきながら断固拒否する。美味しい。こういう甘いの久しぶり。ふふ。機嫌治るの早いなあ。 一口ずつ貰って、返して。コーヒーだけのマルコさんはやや蚊帳の外で申し訳ないけど、楽しい。 「マルコさんも食べます?」 「…おれかよい?」 「甘いの嫌いですか?」 「別に嫌いじゃねェが…」 「あ、無理して食べてもらわなくて大丈夫です。わたしが美味しくいただくんで」 「…食うよい」 あ、そう。まずいとか言ったらぶっ飛ばすぞ。 「…甘ェ」 「苦いって言われたらびっくりしますよ」 「イズったら優しいわね。わたしたちだったら絶対あげないもの」 「今日はそんな気分だっただけです」 「とか言って、次の時もあげちゃうんでしょ?」 「さあ?どうでしょう」 「ふふ、じゃあ特別な一口ね?マルコラッキーじゃない」 「そうだねい」 …そういわれるとちょっと。妙な含みがあって嫌だ。もうやんない。マルコさんにはあげない。 *** 「なァ、あれイズだよな?」 「あ、本当だ。一緒にいんの…ナースたちとマルコ隊長か?」 「イゾウ隊長に知らせるか?」 「いや、マルコ隊長がいんなら別に…あ、」 「…今の見たか?」 「おれは見てねェ。何も知らねェ」 「そうだな。おれも、」 「何を見てねェって?」 |
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