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大きな島らしい。比較対象が一つしかないからよくわからないけど。確かに前の島よりはずっと大きい。薄ら雪化粧した様とてもきれいだ。折角なら真っ赤な椿とか、山茶花とか咲いててほしい。 「冷えるぞ」 そう言って、イゾウさんはわたしに羽織をかけた。わたしの服は精々春秋物。雪の降る季節には、正直寒い。寒いけど。これ、誰の?イゾウさんのなら、ほぼ確実に引きずると思うんだけど。 「…大丈夫です。お構いなく」 「イズル、悪かった。許してくれ」 「嫌です。当分は根に持ちますから!」 笑ってんの見れば、楽しんでんのもわかるんだからな。 イゾウさんから逃げて、手すりに寄り掛かるエースさんの隣に潜り込む。ロハンさんはね。わたしのこと引き渡すから。許さん。…温いな、この人。でも服は着なよ。 「イズ?どうした? 「イゾウさんから逃げてきました」 「何だ、また喧嘩してんのか?」 「喧嘩というか…」 わかってる。わたしはたぶん、また甘えている。イゾウさんが愛想を尽かさないと高を括っている。そんな保証はどこにもないのにね。…随分幼くなったな? 「ほら、そんな顔すんなら仲直りしちまえって」 「別に喧嘩してません」 エースさんはわたしの頭を撫でて、帆を畳みに行った。イゾウさんとは違う。髪がぐっしゃぐしゃになる。それを直して、羽織に袖を通した。 停泊準備をする兄たちを眺めて、自分のできそうなことを探してみたりする。できないことばっかりだなあって思ったから。まあ、眺めてても、できることねえなって思うんだけどさ。力仕事は向いてない。精々邪魔にならないようにしてるくらいしかできない。…本当に何にもできないんだなあ。 「何見てんだ?」 「…働いてる兄たち?ですかね?わたしはできることが少ないから、どうしたもんかと思っているところです」 手が空いたのか、ゾノさんが隣にやってきた。給料ね。ちゃんと貰ったから。退職金込みで。ありがとうございます。 「そんなに焦らなくても、ちゃんと助かってると思うが」 「まるっきりの役立たずではないと思いますけど…」 やれることしかできない。できないこともできるようになりたい。けど、物理的にできないことが多すぎる。背丈とか、筋力とか。2、3番隊の書類手伝いに行こうかなあ…。 「ゾノさんは4番隊?でしたっけ?」 「ああ、古巣に戻ったって感じだな」 「楽しそうですねえ」 「イズルは?16番隊になったんじゃなかったか?」 「…お耳が早いことで」 本当に、残念ながら。わたしの切実な思いは届かなかったわけだ。苦手なんだってば。こう、掌の上で転がされてる感じが気に食わん。 マストの上から兄たちが降りてきて、次から次へと上陸していく。わたしも行こう。冬だって言うなら、日が落ちるのも早いかもしれない。 「じゃあ、わたし買うものあるんで」 「おう。…待て、一人で行く気か」 「…?はい」 「それはやめろ。イゾウ隊長はどうした」 「さあ…?さっきまではその辺にいましたけど」 「おれは今日行けねェからな…ちょっと待ってろ」 「はい?」 そんなに?前の島は一人で上陸しましたけど? *** 「あ、イゾウ隊長、イズルが一人で上陸しようとしてますけど」 「あァ、知ってる」 「いいんですか?」 「知ってるから待ってんだよ」 「声かけてやったらいいじゃないですか」 「そんなことしたら逃げちまうからなァ」 「…程々にしてやってくださいよ」 「あれで甘えてんだよ。本人もわかってる」 |
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