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いつもより格段に短い航海の後、船を寄せたのは無人島だった。暑さは幾分柔らかいけども、ちょっと動いたら汗が流れるような。ドフラミンゴが絡んでる可能性がある以上、町がある島に上陸するのはデメリットがでかい、と言うことらしい。申し訳なくって仕方ない。 「どうせどこに上陸したって飲み食いするだけだからな。大して変わんねェよ」 と、そう言ったのはサッチさんだ。気を使わせてしまったようで、これまた申し訳ない。たぶん、こういうのが苦手だから、頼るとかどうとかできないんだろうな。居たたまれない。既に口を滑らせなきゃ良かった、と後悔している。 「おい、イズ!肉獲りに行こうぜ!囮になってくれ!」 目の前には野性味溢れる森林と、遠くに滝が霞んで見える。その壮大な景色を背景に、ジオンを捕まえて肩を組んだラクヨウさんが笑った。こういう時はこの人のがさつさに助けられる。不本意だけども。 「そんな堂々と言います?」 「逃げ足だけは一丁前だからなァ、どうにかなんだろ!」 「おい、何勝手に決めてやがる」 「あァ?隊長が一緒ならいいって聞いたぞ?」 「それ以前の問題だろ。うちの隊員を勝手に駆り出してんじゃねェ」 「あー、じゃあ、ジオンとイズ貸してくれ!」 「ジオンは貸してやるが、イズルは断る。囮にすんのがわかってて、許可出すわけねェだろ」 「あの、イゾウさん」 「あァ?」 隣でラクヨウさんを睨み付けるイゾウさんの袖を引っ張った。わたしの顔を見るなり、至極嫌そうな顔をして、それはもう、本当に笑いたくなるほど。 「い、行きたい、な?」 「冗談だろ…」 「がっはっは!本人の同意がありゃァ問題ねェよなァ!」 「…おれはこいつのお守りなんか嫌ですよ」 「んー?わたしに負けた人が何か言ってる?」 「なっ、んだとてめェ!一回勝ったくらいで調子に乗んな!」 「わかってるよ。武器持ったら絶対勝てないもんね」 「わかんないよ?ジオンて馬鹿正直だから」 増えた。ハルタさんが。何の集まりだこれ。イゾウさんの機嫌が急降下している。原因の半分くらいはわたしだが。 「おれ、ジオンとイズルがやってんの見損ねたんだよねー」 「…なら、もう一回組ませりゃいいだろ」 「えー、やだ。こっちの方が面白そう」 そうですね。あなたはそういう人ですね。それはわたしの要望とも合致するわけだけども。…ハルタさんの面白そうって碌でもないんだもの。こう、想定以上の難題を持ち出されると言うか。 「それとも何?イズルの好きにさせるとか言っておいて、本人の要望断っちゃう?心配なら、おれがちゃーんと守ってあげるから大丈夫だよ。ねー?」 「ねー?」 「ふざけんな。てめェにくれてやるもんなんかねェ」 「別にもらうものなんかないよ。イズルはおれの、可愛い妹だし?」 「それを言ったらジオンの姉貴だな!」 「おれこんな姉貴嫌です」 「わたしもジオンみたいな弟はちょっと」 両思いじゃないか。話が脱線してるが。弟って言っても、わたしここ数ヶ月…一年近くいなかったからなあ。改めて下っ端って感じがする。 「…イズルは貸さねェ。おれも行く」 「よっしゃ!でっけェやつ仕留めようぜ!」 「イズルの働き次第だよねー。頑張って」 「…あんまり期待はしないでください」 「ならジオンもどうだ?囮対決でリベンジマッチだ!」 「望むところです」 「は?」 「おれラクヨウのそういうとこ、全然わかんない。囮対決って何?どっちの方が美味しそうとかそういうこと?」 わたしもわかんない。けど、ジオンは乗り気だ。何に乗ったんだ。諦めがついたのか、イゾウさんはいつもの涼しい顔をしている。…あ、違うな。獲物を選んでる目だ。 「…ありがとうございます」 「気ィ抜くなよ」 「はあい」 髪をかき混ぜた手が、少し乱暴で優しい。信頼には答えなくっちゃね。無謀も無茶もしない。いや、いつもしたくてしてるわけじゃないけど。 *** 「おいおいおい、いいのか?」 「言っても聞かねェだろい」 「隊長が三人もいるなら問題ないんじゃないか?」 「だとしても、船の周りからは離れて欲しくないんだがねい…」 「ふっ…、幽閉しておくには、お転婆な姫君だからな」 「イゾウがいるんなら平気でしょ。他三人見捨ててでも連れ帰ってくると思うけど?」 「…それはそれで嫌な信頼だけどな」 |
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