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全快。と言うのかどうかは知らないけど、帰ってきて早々悩みがある。

姉さんとの朝食。は、日課にしたい。だって、そうでもしないと、お風呂くらいしか一緒に過ごす時間がない。けど、イゾウさんは起こしてくれない。そもそも、あの人はそんなに早くない。寝覚めはびっくりするほどいいけどな。わたしは起きられない上にぼーっとしちゃうタイプ。駄目に駄目足したらもっと駄目だった。

「何とかなる?」
「解体してもいい!?」
「…元の通りに使えるなら」
「任せて!おれ、こんなの見るの初めて!」

でしょうね。こっちにはない文明の利器だからね。嬉々として解体を始めたリノンに些かの不安はありつつ、扉を閉めた。…いらん機能とかつけられたらどうしよう。単純に、目覚まし作ってって手もあったんだけど。携帯使えたら写真も撮れるし。ネットは使えないだろうけど。

「…あんたまたリノンの部屋に出入りしてんのか」
「そんなに入り浸ってるわけじゃないですよ」
「おれたちからすりゃ、十分入り浸ってる」

そんなこと言われても。眉を寄せてため息をついた兄さんが、持っていた金槌をくるりと回す。

「何でこいつが隊長でもないのに個室なのかわかるか?」
「同室の人ごと吹っ飛ばしちゃうから?」
「…わかってて出入りしてんだから敵わねェよなァ。イゾウ隊長の苦労が伺えるぜ」
「そんな苦労してますかねえ」
「してるしてる。あんたみたいなじゃじゃ馬、苦労なしに飼い慣らせねェ。相当物好きだよなァ」
「…反論したい気持ちはなくもないですが、物好きってとこには同意しますかね」

じゃじゃ馬じゃない。飼い慣らされてる感はあるが。結局、毎日一緒のベッドだし。何と言うか、良いようにされてる。ような気がする。

リノンの部屋から一際大きな音が聞こえた。おい、待て。何した。壊してなかろうな。



***

「あ、イゾウ隊長!同棲生活はどうですか?」
「…その言い方やめろ」
「あれ、違いました?結婚はまだだってリリーさんが言ってたんですけど」
「そういう問題じゃねェ」
「でも、イゾウ隊長たっての希望でイズさんが移ったんですよね?やっぱり同棲、」
「てめェ、それ絶対イズルに言うんじゃねェぞ」




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