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すごく、ゆっくり眠れた気がする。朝遅くまでとか、昨日疲れたとかもあるけど。温かくて。もうちょっとこのままがいい。

「イゾウさん…?」
「寝てていいぞ」
「…ん」

頭を撫でる手が心地好くて、イゾウさんに擦り寄る。温かい。やばい。出られる気がしない。

『プルプルプルプル…プルプルプルプル…』

…ちょっと、おかしくって目が冴えちゃったよ。相変わらず間抜けた呼び出し音だなあ。何?誰?

「…イゾウさん、電伝虫が呼んでます」
「別にいい」
「良くないでしょうよ」
「どうせマルコだろ」

いや、知らんけど。そうなん?それは出なきゃ駄目なやつじゃない?

「わたし出ます?」
「いい。放っとけ」
「…出たい」
「……しょうがねェな」

渋々、ため息つきで腕が緩む。体を起こしてイゾウさん越しに、サイドテーブルに手を伸ばした。小電伝虫。ってことは、わざわざ持って来てるんだよね。使ってあげてよ。

『てめェ、連絡しろって言っただろい!』

受話器を上げるや否や、えらい剣幕の声が響いた。寝起きにはきついなあ。そして懐かしい。

「おはようございます。イズルです」
『…あ?』
「お久しぶりです。イズルです」
『…あァ、久しぶりだよい』

ふふ、嬉しいなあ。途端に大人しくなった電伝虫につい笑いたくなる。周りに誰か、他にいるのかな。早く会いたい。

『てことは、イゾウといるんだな?』
「はい。エースさんはご飯食べに行っちゃいましたけど」
『…そうかよい』
「イズル、代わる」
「はあい」
「おい、合流した。もういいな」
『ふざけんじゃねェ!事後報告も大概に、ガチャ』
「いいんですか?」
「問題ねェよ」

あ、そ。なさそうには見えないけど。やや不機嫌そうな顔で、わたしの寝癖を直す。マルコさんは、もっと不機嫌だろうなあ。帰ってから怒られても知らない。

「…ん?もう着いてるってことですか?」
「いや、おれとエースだけ先に来た。オヤジたちは夕方ぐらいだ」
「じゃあ、何か食べに行きます?」
「…あァ」

ん、笑った。きっと、今日のご飯は昨日より美味しい。ベイさんとこのも美味しかったけど、サッチさんのご飯が早く食べたい。



***

「あっはっはっは…あー、おかしい。聞いた?あの機嫌のいい声!」
「合流した時点で連絡しろってんだよい!あの馬鹿!」
「諦めろ。言って聞くようなやつじゃない」
「イズ、元気そうだったなァ。何よりじゃねェか」
「あァ、どんなレディになっているか、楽しみだ」




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