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翌朝、食堂はいつもより人が疎らだった。…まあ、あんな無茶な飲み方してれば二日酔いにもなるわな。本当のとこ、わたしも今日は食堂に来たくなかった。随分と醜態を曝したもんで。

とは言っても、わたしは隊長たちとあんまり顔を合わせない。あっちこっちの雑用を手伝ってるから。一緒に雑用やってる隊長なんて、あんまりいない。時々いるけど。ご飯の時間も、姉さんたちと一緒だとずれてるし、だからこそ見たことない隊長さんもいたわけで。

「ラクヨウさんとフォッサさんに会いたいんですけど、何処にいますかね?」
「ラクヨウ隊長とフォッサ隊長…?何かあったのか?」
「何かあったっちゃあ、何かあったんですけど。あんまり深く聞かないでください」
「おお…、わかった」

相談相手はいつものロハンさん。今は甲板掃除の真っ最中だ。めっちゃしんどい。何でこの船こんなにでっかいの。

ロハンさんが他何人かに訊いてくれた結果、今なら部屋にいる可能性が高いらしい。今かあ…今は手が離せないからちょっと無理。

「おい、やっとくから行ってこい」
「え、嫌です。自分でやるって言ったんだから、私事でやめたりしません」

例え大して役に立たなくても。それに探してるって届けばそのうち会える筈。たぶん。流石に二度と会えないなんてことはないだろう。

その期待的予測は当たって、フォッサさんには会えた。あの時、ラクヨウさんを制してくれたこと、場所を変えてくれたこと、たぶん嫌な気持ちにさせたこと。礼を言って謝った。自己満足でしかないんだけどね。気にするなと言ってくれたから、たぶん大丈夫。

問題はラクヨウさん。会えない。尽く会えない。部屋に行っても食堂で張っても、船の中を探し回って色んな人に訊いても会えない。幾らわたしだってわかる。避けられている。只、避けられてるああそうですか、と引き下がるような人間じゃない。ので、ラクヨウさんの見込みが甘いと言える。あれでわたしを大嫌いになったとしても、此処まで徹底的に避けるほど暇じゃないのでは?つまりは、幾らかの後ろめたさがあるんだろう。

「イズ、ラクヨウを探してるんですって?」
「リタさん!どっかで見ました?」
「残念ながら見てないけど、手伝いましょうか?」
「…いえ、大丈夫です。絶対見つけますから」

正直に言おう。鬼ごっこみたいで楽しい。



***

「おい、ラクヨウ。いつまで逃げ回るつもりなんだよ?」
「いや、だってよ、絶対怒ってんだろ?」
「怒ってるっつーか、楽しそう、だな」
「冗談じゃねェよ!流石におれだって、悪いことしたって思ってるんだぜ!?」
「なら謝ればいいじゃねェか」
「探し回られてそれどころじゃねェんだよ!」
「お前なァ…男ならびしっと決めようぜ、びしっと!」




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