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しんみりパートは終わりかって?終わらないよ!何でついて来るのさ。何で、態々食堂に連れ込むんですかー! 「おろしてください」 「ちょっと待ちな」 「…おろせ」 「あァ、そっちが素か?」 うるさい。降ろせったら降ろせ。食堂なんかに用はないんだ。 「大人しく座ってんなら降ろしてやるぞ?」 「…わかりました」 ゆっくり床に足がついて、イゾウさんが奥に入って行く。…なんて、本当に大人しくしてると思ったか! 「お前なァ…」 あっさり捕まった。扉に手をかける前に捕まった。びっくりしたわ。 「酔いが回ってんのに走るんじゃねェよ」 「別に回ってません」 「真っ直ぐ歩けもしないくせによく言えるな」 うるさい。歩けなくないわ。今から平均台に上ったっていい。何この人めっちゃ性格悪いな?そっとしといてくれよ、もう。 「リリーにも言われたろ?いっぱい甘えていいってよ」 「それとこれとは別です」 「…今ならオヤジも見てねェぞ?」 何だそれ。何それ、ずるい。縦抱きにされて、歩く振動にまた涙腺が緩む。赤ちゃんじゃないんだぞ。馬鹿にすんな。 「やめてください。泣きたくないんです」 「何言ってんだ。泣ける時に泣いとけ」 「だから嫌なんですってば」 そう絞り出した声がくぐもった。額をイゾウさんの肩に押し付けて、握りしめてしまった着物はたぶん皺になっている。けどまあ、わたし悪くないけどな! 「イズルは色々と我慢しそうだからな」 とぷとぷ、と水音がした。ぎ、と椅子を引く音がして、振動が止む。何を知った風に。大した付き合いしてないし。何ならロハンさんとの方が付き合いは長いし。 「別に、我慢してるとかじゃなくて泣きません」 「さっき我慢させちまったろ?その分甘やかしてやるよ」 「いりませんってば」 「そう言うな。兄貴が甘やかしてやりたいんだよ」 ずるい。ずるいずるいずるい。どうせわたしは口だけで、いらないと言いながらこの手を離せない。充分、過ぎるほどに、いっぱい甘やかされている。 「イズル」 ぎゅうっという圧迫感と、酷く優しい声。わかってやってんだろ、この遊び人。 「泣いてもいいぞ。今なら誰も見てねェ」 「…うそつき」 あんたが見てるじゃんか。 *** 「リリー、ちょっといいか?」 「あら、イゾウ隊長。イズの具合はどう?」 「…見てたのか」 「勿論よ。あれだけ隊長がいていきなり泣かせるなんて、一体どういう了見かしら?」 「返す言葉もねェ」 「それで?あなたが抱えてるうちの子はどうしたの?」 「寝ちまったんだよ。部屋開けてくれ」 「…ふふふ、折角の色男も形無しね?」 「放っとけ」 「いいわ。そのまま貰うから。イズ一人くらいなら大丈夫よ」 「悪ィな。任せた」 「…二日酔いにならないといいけど」 |
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