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起きたら昼過ぎだった。だって居心地好かったんだもん。欲張りに拍車が掛かった気がする。際限なくなっちゃったらどうしよう。

「あれ、リリーさん?」
「おそよう。朝ごはんは食べたのかしら?」

宿から出た所で、リリーさんが待っていた。偶々って感じじゃない。おそようって。反論の余地はございませんが。

「…食べてません」
「イゾウ隊長?」
「悪かった。次は気をつける」

苦笑いをして、イゾウさんがわたしの頭を撫でる。何でだ。何でイゾウさんがわたしの食事管理までするんだ。と言うか、もしかしてイゾウさんも食べてないのでは。

「イゾウさんは食べました?」
「いや?食ってねェよ?」
「…ごめんなさい。いつまでも寝てて」
「問題ねェよ」
「問題あるわよ!只でさえ細いんだからちゃんと食べさせて頂戴!」
「悪かったよ」

イゾウさんが両手を上げた。珍しいものを見ている気がする。姉さんと言うか、お母さん?

「で?わざわざ文句言いに来たわけじゃねェだろ?」
「そうね。取り敢えず、一緒に来てもらえるかしら?」
「あ?」
「デートの邪魔をするようで申し訳ないんだけど。イズにお客さんよ」
「わたし?」
「…あいつか」

舌打ちの音に振り返ったら、イゾウさんが眉間に皺を寄せていた。どうした。どこにその顔だ。

「ふふ、察しが良くて助かるわ」
「何でこの島にいんだよ」
「そりゃあ、船長に挨拶に来たのよ。この辺にいるのは知ってたでしょう?」
「…誰?」
「会ってからのお楽しみ、かしらね?」
「別に楽しみでもねェだろ」
「イゾウは来なくてもいいわよ?」
「…行く」

何ぞや。別にいいけど。置いてけ堀感が寂しい。



***

「いつまでいる気だよい」
「さてね。そのイズルちゃんとやらに会ってから考えるよ」
「…余計なことすんじゃねェぞい」
「おや、随分甘やかしてるじゃないか」
「おれは甘やかしてねェ」
「おれは?」
「甘やかしてんのはイゾウ隊長っすよ」
「甘やかしてるっつーか、…まァ、過保護だな」
「それはまた、面白そうな話だね?」




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