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今更ですけど、一緒に入るってどうすんの?OK、G□□gle!お風呂の入り方!…何て、もう電源も入らないんだから答えてくれるわけがない。

熟考の末、体にタオルを巻いて風呂の扉を三つ叩いた。ら、向こうから開いた。正直恐怖。恥ずかしいは通り越した。怖い。めっちゃ怖い。

「体冷えるぞ」

湯船に浸かったイゾウさんに促されて、後ろ手に扉を閉めた。お風呂ってこんな怖いものだっけ。猫の気持ちがわかる気がする。お風呂怖い。このまま入っていいの?体流してないけど。タオル巻いたままって駄目じゃなかったっけ。

「イズル」
「…はい?」
「大丈夫だから、取り敢えず入んな」
「…このまま入っていいんですか」
「外してくれてもいいぞ」

無理。いや、待ってこれ温度高いな。熱い。待って。お湯揺らさないで。

「入って来なかったらどうしてやろうかと思った」
「…どうしていいかわかんなかったんですよ」
「入込知らねェのか?」
「はい?」
「混浴」
「知らなくはないですけど、入ったことないです」
「…なるほどな」

なるほどな?そんな、なるほどな場面あった?此方でだって、混浴文化に会ったことないけど。

「イズル、おいで」
「え、いや、遠慮します」
「んなもんいらねェ」
「うわっ、ちょっ、待って、」

狭い!わけじゃないけど、逃げ場がない。掴まれた腕に引きずられて、いつもの位置に収まる。近い。体温が直接当たる。

「折角一緒に入ってんのに、離れることねェだろ」
「そうですか」
「何もしねェよ。イズルがいいって言うまでな」

そういう、問題、では、ない。これを何もしないとは言わない。心臓がいつもの三倍動いてる。絶対目視できる。肉の上から。

「可愛い」
「…っ、なん、いきなりやめてください」
「ふ…、緊張し過ぎ」
「うるさいですよ。あんたと一緒にしないでください」
「心外だな。おれだって緊張くらいする」

嘘だ!少なくともわたしよか緊張してない!してるならしてるで、してる風にして欲しい。いっそ普段より機嫌良いなくらいしか思わないんだけど。

「今まで何も考えてなかったんだろ」
「…何をですか」
「おれに抱かれんの」

…うるさい。考えてなかったさ。考えないようにもしてた。だって、今更、そんな。わざわざわたしじゃなくたってって思うもん。そんなこと言ったら、たぶん怒られるけど。

「それ、決定事項なんですか」
「そんな何十年も我慢できねェぞ」
「…そっちは決定事項なんですね」

何度聞いても何度言われても実感湧かない。お湯の中で、イゾウさんがわたしの手を弄る。手と言うか、指。左手の、薬指。

「他のやつになんかやらねェよ」
「何がそんな、イゾウさんの琴線に触れたんですかね」
「さァ?好いてる理由なんざ、腐るほどあるしな」

…そりゃ、どーも。お口が達者で結構ですわ。



***

「あら、イズは一緒じゃないの?」
「今回はイゾウと、ですって」
「あら、イゾウ大丈夫?」
「これ以上生殺しなんて酷じゃない?」
「逆じゃない?我慢できなくなったから」
「それはそれで…イズは大丈夫かしら」
「どっちにしても心配なのね」




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