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抜糸を経て、雑用復帰。とは言っても、ここ最近はやたらと風が強くて、危ないからと外に出られない。いいお天気。洗濯日和。

「…おい」
「何ですかー。文句はロハンさんに言ってくださーい」
「違う!文句じゃねェよ!」

…えー、何の用よ。文句じゃなかったら何。お小言?何か、ジオンが正式に16番隊に入ったらしい。何で?ラクヨウさんとこどうすんの。四六時中睨まれて、文句言われんの嫌なんだけど。

「…悪かった」
「はあ?」
「あんたを、弱くて何もできないやつとか言って悪かった」

はあ。食堂のテーブルを拭く手が止まる。どういう、気の迷いだろう。そもそも全然気にしてなかったんだけど。

「別に謝らなくていいですよ。事実ですし」
「…確かにあんたは、あんな小さいナイフ一つで死にかけるくらい、めちゃくちゃ弱いけどよ」

おい。暴言。謝りに来たんじゃないのか。リノンもそんなこと言うけど。鎧作ってあげようか、だって。いらんわ。んなもん着て、わたしが動けるわけなかろ。

「でも、何もできないわけじゃなかった。…その、おれたちの知らないところでとか、色々」
「そんなの、わたしだけじゃないですし」
「それでも、失礼なことを言ったから悪かったって言ってんだよ」

…はあ。さいですか。どうしよう。別にいらないんだけど、受け取るまでどこにも行きそうにない。

「じゃあ、一応受け取っておきましょうかね」
「一応じゃねェよ。あんたのこと認めてやるって言ってんだよ」
「謝る人の態度じゃないですよねえ」
「うるせェ」

ほら、そういうとこ。別にいいけど。用は済んだとばかりに食堂の扉を開けたジオンが戻ってきた。今度は何。

「その、敬語いらねェ。気持ち悪ィ」
「…あ、はい」

って、つい。敬語で返しちゃったけど。ジオンは今度こそどっか行った。たぶん、ジオンなりの歩み寄り。なんだろうか。敬語使ってるからって、別に敬ってるわけじゃないんだけどね。



***

「とうとうジオンが絆されたぞ」
「堅物ロハンに、イゾウ隊長、ルーカにジオンか…」
「あ?何だ?」
「いや、イズは猛獣使いにでもなるのかと思ってな」
「猛獣ってイゾウ隊長だけじゃねェか」
「どちらかと言ったら珍獣ハンターだろ」




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