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斯々然々で、またこの船にお世話になることになったんですけど大丈夫ですか?…という感じのお伺いを立てたら、船長さんは少し眉を寄せた。やっぱ駄目?今更駄目って言われても困るんだけど。 「お前ェ、故郷に帰りたくはねェのか?」 「ああ…まあ、別に帰りたくはないですね。此方の方が面白いです」 「…グララララ。此方の方が面白ェか」 船長さんには改めてちゃんと話した。安全で、何不自由ない、わたしの小さな世界の話。もしかしたら、それはこの世界の人たちが渇望するものなのかもしれない。 「無い物ねだりなんです。普通じゃ手に入らないものを追っかけてる方が楽しい」 「そうか…」 手に入ったものに興味はない。…とまでは言わないけど。いつまでも眺めてたら飽きてしまう。だからバイトも続かないんだな。 相変わらず静かな目が、ゆっくり細められた。伸ばされた手を、わけもわからず握ってみる。小人にでもなった気分だ。 「なら、お前ェは今日からおれの娘だ。好きなように生きてみろ」 「ありがとうございます。…父さん?」 「…悪くねェ」 その、にやりと笑った相槌に、そこら中から雄叫びが上がった。うるさいよ。いきなり大声出さないでってば。 「お前ェらァ、新しい妹だ!泣かすんじゃねェぞ!」 「「うおおおおおおお!」」 「うるっさ、いや、そう簡単に泣きませんよ!」 其処此処から、よろしくだの何だのと聞こえる。ゾノお帰り、なんてのも混じってた。嬉しいね。ついつい顔が笑う。 「お前酒飲めんのかよ?」 「ちゃんと成人してますから合法でーす」 「本当に22なのか…」 「そんなに何度も確認します?」 いつまでその話してんのさ。聞き飽きたわ。 「イズ−、兄ちゃんに酌してくれよ」 「高いですよ?」 「何だよ、やっぱり駄目かよ」 そうやって不貞たようにジョッキを開けた兄に、傾けた瓶を差し出す。この辺だけ、少し静かになった。 「えっ、まじ?」 「まあ、いつでも請求できますし」 「うえー、お前怖ェよ!幾ら請求する気だよ!」 「さあ、どうでしょう」 ジョッキに注ぐと、周りが揃って空けだした。何。酌って何か特別な意味でもあるの? 「俺たちも注いでやろうか!」 「結構です。お酒は手酌が一番美味しいので」 「何だ、そりゃ」 「おれはきれいな姉ちゃんに注いで貰った酒が一番美味ェなァ…」 「じゃあ、妹のは要りませんねー」 「あっ、嘘嘘!イズの酒が一番美味い!」 あは、可笑しい。楽しい。言いたいこと言って、やりたいことやってる。 *** 「あれ、イズ一人だぞ」 「ん?何だ、あいつら潰れちまったのか」 「だからって一人で飲んでるイズもすげェけどな」 「丁度いい。隊長連中集めろい」 「イズも呼ぶか?」 「それはもうイゾウが行ったな」 「じゃあ、ハルタたち探してくる!」 「おいこらエース!走るんじゃねェよい!」 |
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