恋焦がれて見た夢12




※暴力表現ありです。










「はぁっ、はぁ…はっ…。」

俺は広い屋敷を走っていた。身体はとても軽い。
俺があの店に売られた理由、それは俺が見た目の良い化け物だったから。
もちろん人間だが、その力が尋常ではなかったのだ。
子供ながらにして道においてあった人力車を投げ飛ばしてみたり、
デカい木を引っこ抜いてみたり。
それに慄いた両親は俺を見世物屋に売ろうと決めた。
しかし、黙っていれば俺はただの子供。当然買われるはずもなかった。
そこでそいつらは俺を吉原のあの店に売った。
見てくれもいいし、力持ちだからと言って。
それに乗った店主は俺を買い上げた。
今となっては感謝している。
とりあえず飯には困らなかったし、臨也にも会えたから。

「誰だコイツは!」

さっきから雑魚ばかりが出てくる。
うっとおしくて敵わない。
軽く殴っても2、3メートルはぶっ飛ぶ。

あぁ、うぜぇうぜぇうぜぇ!!!

助けてくれなんて台詞は聞こえねぇなぁ。
屋敷の一番奥のデカい部屋。
趣味の悪い襖を蹴破った。

恐らく、この屋敷内で意識のある人間は3人だ。
それは俺と、目の前の気持ち悪ぃオヤジと、臨也だ。

目を見開く臨也と、何事だと慌てふためくオヤジ。
とりあえず入り口の近くにあった行灯を投げつける。
今更喚いたところで他に人はいねぇんだ、それに俺はこいつを許さない。
力いっぱいその穢い手を踏みつける。
この手が一度でも臨也に触れたかと思うと吐き気がする。

俺はしゃがみこみ、オヤジと同じ目線になる。

「すっ、すまなかった!頼む、許してくれ!金ならいくらでも・・・ぅぐ!?」

すまなかったじゃすまない事態になろうとしてたんじゃねぇのかよ、おい。
室内には大量のガーゼ、そして医療器具にホルマリンと瓶があった。
来る途中の部屋でも見かけたが、到底理解の出来ない悪趣味だ。
こいつは気違いの人体臓器マニアだった。
俺はその話をあの上客の女から聞いた。
最近そいつがうちの店から花魁を買ったそうだが、本当なのかと。
外では人体の一部や臓器が抉り取られた変死体がよく発見されているという事件もあり、街ではそいつが今一番怪しいと噂されているという。
その花魁は臨也で間違いなかった。
俺はすぐ女に協力してもらいなんとかここまで来ることが出来たのだ。

 








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