恋焦がれて見た夢11





「…マジかよ。」

店のやつに臨也が身請けすると聞いた。
それも相手が有り得ない大金を積んだらしく、店としても断れなかったという。
そこに臨也の意思はないのかよ。
結局金がものをいうわけか、ふざけんじゃねぇ。
この間外がどうとか言っていたのはこのせいだったんだと今になって気づく。
俺は臨也のところに走った。


「臨也。」

「あ、シズちゃん!俺ね外出れるんだ。」

本当はこんな形を望んでいないくせに。

「楽しみだなぁ。どんなところかな。」

本当は怖いくせに。
小刻みに震えるその手を握り締める。
はっと俺を見る臨也は今にも泣きそうなのに無理して笑ってみせる。

「良かった、でしょう?」

良くない!全然、何一つ良いことなんかない!
俺は臨也を抱きしめた。
泣いていいんだ、今は。
いや、今じゃないともう泣くことは出来ない。

「…シズちゃん、寂しい、怖いよ…ッ。」

あぁ、知ってる。
俺も寂しい、あの日からずっと一緒だったのに会えなくなるなんて。
せめて相手が臨也の望んだ奴なら、俺だって諦めて送り出す。
けど今回はそれが出来ない。
見ず知らずの金しか持ってないような奴に臨也を渡したくない。

「嫌だよシズちゃん…、外になんか行きたくない・・・。」

「じゃあ逃げるか。」

結構本気で言っている。
金なら適当に着物やら小物を売ればとりあえず手に入るだろう。
店には迷惑をかけるだろうけど、それよりも臨也が大切だ。
しかし臨也はそれを拒んだ。
当然それで失敗すればただでは済まない。
それでもその時はその時だ。

「もう、いいんだ・・・。俺だって腹を括るよ。
こんなこと言ったら変かもしれないけど、幸せになってね。
俺シズちゃんのこと忘れないから。」

最後の夜に、俺は臨也を抱いた。

 






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