恋焦がれて見た夢5




当時俺はまだ客を取ることが許されたいなかった。
だからもちろん抱いた経験なんて皆無。
そんなある日、店主に呼ばれた。

「静雄、あんたももういい年だ。けど最初から客を抱かせるわけにはいかないからね。」

入っておいで、と言う声に続き部屋の襖が開いた。
そこに立っていたのが臨也だ。
綺麗な顔をしていると思ったが、その時俺は臨也を知らなかった。
店でひそかに地位を築いてることも、
花魁候補として育っていることも、
男に抱かれている存在だということも。
だから俺は憤慨した。

「おい、こいつ男じゃねぇか!俺に男を抱けってか?」

主は静かに頷く。

「ふざけんな。そんな趣味はねぇよ。」

そもそも同性相手に興奮出来るはずもない。
胸だってないし、俺と同じものをつけてるはずだろう。
何も言わない臨也を睨みつける。

「臨也、後はお前に任せるよ。」

そのまま俺と臨也を残し主は部屋を出た。
それから1時間、俺は無視を決め込んでいた。
どう考えても目の前の男を抱こうなんて気にはなれない。
男は円形の格子窓から外の様子を見ている。
その横顔は確かに綺麗だ、けどそれだけだ。
すると臨也がこちらに向き直りいきなり喋りだした。

「君の思ってることを当てようか。
どうして最初の相手が男なのか。そもそも男相手に興奮出来るわけがない。
胸だってないし、当然君と同じものを持ってるよ。」

「だから無理だっつんだよ!」

「うん、別に君にそんなの求めてないもん。けど世の中には男にだって興奮出来る奴がいるんだよ。」


それが信じられなかった。
同じ男に興奮するだって?どこにそんな要素があるんだよ・・・。
呆然としていると臨也が俺の前に座った。

「俺は臨也、君より5つ上だよ。よろしく。」

年上だということにも驚いた。
だって年齢のわりに細くて、小さかったから。
1つだけそのことで納得できたのはその冷静さだった。

「・・・静雄だ。」

その時にだったらシズちゃんだね!と笑った顔を初めて可愛いと思ってしまった。






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