05 side臨也



留学から帰ってきてからの大学生活はそれなりに快適だった。
いろんな人間がいて、見ていて飽きないし勉強も楽しい。
そんなある日、俺はレポートの課題を仕上げようとお気に入りのカフェに来ていた。
天気がよかったからテラス席を選んでコーヒーを注文した。
もうすぐ夏休みだ、高校時代の夏を思い出す。
受験生ということもあって補習授業が行われたっけ。
4人でプールにも行ったし、花火もしたなぁ・・・。
どれもこれも懐かしい記憶だ。
1人暮らしをしてから幼馴染たちには一度も顔を見せていない。
おまけに携帯の連絡先さえも教えていない。
愛想尽かされちゃったかな、なんて。
ため息をついてコーヒーを啜る。

「臨やん発見ー。」

「何してんだ?」

「レポート?俺それ出てないから既にアウトだろうな。」

同じ学科でよく喋る3人が通りかかった。
ちゃっかり席についてお店の人に注文をしだした。

「つか携帯見ろよ。どんだけ連絡したと思ってんだ?」

マナーモードにしたまま放置していた携帯に目をやると、3人からのメールやら着信で埋まっていた。
内容は大体どれも同じで、今どこにいるのかということだった。
まぁ結果的にここで会えたんだから良しとしよう。
レポートを仕上げながら一体何の用事だったのかと尋ねる。
話によると夏休みに旅行に行こうということだった。
なんだか不思議な気持ちになった。
今まで俺はほぼドタチン、新羅、シズちゃんと一緒にいた。
この3人は友達というよりもはや身内みたいな感じだった。
だから目の前の3人は初めて出来た友達のようがする。
自分のことを臨やんなんてふざけたあだ名で呼ばれたのも、
旅行に行こうと誘われたのも、気兼ねなく話しかけてくるのも新鮮なんだ。
悪くないかもしれない。

俺はその旅行に行くことにした。

 



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