06 side臨也



8月中旬、夏休み真っ盛りだ。
お盆ということもあって俺は実家に帰っていた。
この間行った旅行は思いのほか楽しくて、母親についたくさん話してしまった。
そしたらにっこりと笑って良かったわねと言ってくれた。
今までこんなことなかったから多分嬉しかったんだと思う。
そんな母さんは買い物に出かけてしまい家には俺1人。
することもないから、お土産に買って来たクッキーを食べながらテレビを見る。
きっとみんな帰ってきているんだろうなー。
迂闊に外なんて歩きたくない。
あれ、俺なんでみんなのこと避けてるんだろう。
別に・・・シズちゃんが俺のことを想わなくなった、それだけじゃないか。
終わったんだ。だから今更どうこうなるはずないし、ドタチンや新羅に会っても支障はないはずじゃん?
けどシズちゃんにはまだ会いたくない。
間違いなく泣いちゃうと思う。
今誰といるの?幸せなの?どうして俺のこと嫌になったの?
マズい、思い出しても涙が滲む。
たまらなくなって俺は携帯を持って自分の部屋に走った。

コールする先はいつだって優しい彼だ。
もしかしたら知らない番号には出ないかもしれない。
出ても俺だとわかったら切られてしまうかもしれない。
都合がいいのはわかってるけど、縋ってしまう。

『・・・もしもし?』

出てくれた。
久しぶりに聞く声は変わらない。
電話の向こうから賑やかな音がする。
親戚が来ているのかもしれない。
あぁ、嗚咽がこみ上げて声が出ない。

『おい、いたずらか?』

待って、切らないで。

『・・・。』

「ドタ・・・チ・・・」

『臨也か!?』


もうそこからは声をあげて泣いてしまった。

 



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