20 side静雄



「臨也・・・。」

「シズちゃん、言わないで。俺まで泣いちゃうから。」

臨也の気持ちは十分伝わった。
教室で、何も言わずに立ち去ったのはこのことがあったからだ。
臨也は俺に謝るのと同時に感謝を告げた。
留学は6月から2年間らしい。
こいつは1人で散々迷ってこの答えを出した、だったら俺もそれを応援してやらないといけない。

「これ、やるよ。」

俺はお気に入りのリングを臨也に渡した。
しかしサイズがデカいようで人差し指からするりと抜けてしまうと目の前で見せてきた。
だったら首から提げておけと言ってその手に握らせた。
貰っていいのかと聞かれ、俺はそれを否定した。

「2年後、返しに来い。」

そう、あげたらそれでお終いだ。
だったら返しに来させればいい話しじゃないか。
きょとんとしている臨也に、必ず待っているから絶対返しに来いと言いもう一度強く抱きしめた。

「…そういうシズちゃんだって、心変わりしないって言い切れるわけ?それに2年間だよ、大学の2年は大きいよ。」

俺の服を掴んで少しだけ震えている。
こいつにしてみれば2年は大きいものかもしれない。
だが、俺にとってみれば2年なんてあっという間なんだ。
そもそも俺が一体何年片思いしてきたと思っているんだろうか。
その旨を伝えると、本当にそれでいいのかと俺の目を見て聞いてきた。

「手前が行くなっつって行かないならそれに越したことはねぇな。けどそうもいかねぇんだろ。」

だったら、俺は今まで通り待つだけだ。
距離は遠くなるけど、それ以外は何も変わらないと思った。


 

 



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