16 side静雄




邪魔するならどっか行けと邪険に扱われ、ムカついたので意地になって臨也の前の席に座った。
さらさらの黒髪とか、長い睫とか、ペンを持つ指が細いとかそんなところばかり見てしまう。

「何。」

そんな視線に気づいたのか、不満そうな顔をしている。
けど邪魔はしてねぇから気にしねぇ。
ノートに綴られた文字を見てふと間違いに気づいて指摘した。

「へぇ、シズちゃんやっぱり英語得意なんだね。」

へらっと笑って見せた顔が可愛くて、

「臨也。」

ちゅっ

キスしてしまった。
した後でヤバいと思った。
顔が見れねぇ。

「は?なん…で?」

あぁ、臨也の声が震えている。
んなこと聞くんじゃねぇ、察してくれよ・・・。

「わ、かんない。そんなのシズちゃんじゃない!」

そう言って持っていたペンを投げつけてきた。
それに俺もつい勢いで言ってしまった。

「あぁ!?何年一緒にいるんだよ、いい加減に気づきやがれ!」

「毎日ずっと喧嘩しかしてないじゃん!そのどこにキスに繋がる要素があるわけ!?」

「うるせぇな。んなの…好きになっちまったら仕方ねぇだろ。」

静まり返ってしまった。
終わったな、こんな形で言うつもりはなかったのに。
しばらくして臨也が小さな声で呟いた。

「俺……、シズちゃんの2年間を奪えないよ。」

「は?」

よく聞き取れなくて聞き返した。
すると首を横に振った。
意味がわからないまま、臨也は荷物をまとめて足早に教室を出て行った。

 



Prev Next