暗殺チームの飲み会事情
 宴が終わった男たちは、リビングのあっちこっちで好きなように眠りに付いていた。ある者は酒瓶を抱え、ある者は何故かパンツ一枚だったり、大きなイビキをかいて眠る者もいれば、静かに眠る者もいる。宴は大いに盛り上がり、その証拠に飲み終わった酒瓶やら缶やらが散乱していてテーブルの上には中途半端に残った料理が置かれている。
 僕はそんな彼らに一人ひとりにへと毛布を掛けた。そしてかなりの惨事になっているのを見て、片付けの事を考えると一つ溜息を付いた。

 今から数時間前、料理当番がめんどくさくなったホルマジオの一言により飲み会が始まった。
『まだ凜の歓迎会をやっていないから、今日は飲むぞ』
 そう声を掛けられた仲間達は、それぞれ自慢の酒やツマミを持ち寄った。それはビンテージ物だったり、この前のジェノヴァで購入したやつだったり、安酒だと文句の声が上がった物とか様々だった。あいにく僕はお酒の常備はしていなかったので、サラダやらグラスを用意するホルマジオの手伝いをしていた。
 
 相変わらずアジトに殆どいないソルベとジェラート以外のメンバーが集まり、僕の歓迎会はスタートした。まだ完璧に受け入れてはくれてはいないだろうけど、こうやって歓迎会を開いてくれたのは素直に嬉しいと思えた。
 僕が乾杯の酒をチビチビと飲んでいる間に、皆はあっという間に二杯三杯と進めていく。実を言うと、僕はお酒がそんなに強くないのだ。味は嫌いじゃないのに飲めてせいぜい三杯ぐらいで、すぐに眠くなる体質だった。せっかくお酒も美味しい国なのに、ちょっと損をした気分にいつもなる。
「凜、ちゃんと飲んでるかぁ〜?」
 すでに酔いが回っているのか、ギアッチョが絡んでくる。いっつも不機嫌そうにしているのに、今は頬を赤らめヘラヘラと笑い肩を組んでくる様子だ。案外、彼も酒には弱いタイプなのかもしれない。
「あははははっ。ギアッチョの奴、もう酔ってやんのぉ〜」
「うるせーぞクソメローネっ!」
 ギアッチョの様子が面白いようでメローネがいつものようにからかうと、ギアッチョは怒り始めるがやっぱりいつもの覇気までではなかった。
「おい、このワイン美味いな」
「そいつはこの前の任務の時にくすねた物だぜ」
「ジェノヴァのワインもなかなかのもんだな」
 プロシュートやホルマジオ達は、それぞれのワインの味比べをしていた。その傍では、イルーゾォが無言でひたすらサラダを頬張っている。あの調子だと、あっという間にサラダが無くなりそうだった。そして、そんな仲間達をリーダーは見守りながら静かに酒を飲んでいた。
 僕がようやく乾杯の酒を飲み終わった頃、ペッシの姿が見当たらないことに気がついた。キッチンの方に目を向けると、ペッシが何やらやっているので見に行く事にした。
「手伝おうか?」
「……!? あぁ、凜か。オレの事は大丈夫だよっ! 今日の主役は凜なんだからゆっくりしていて!」
 追加のサラダとかツマミを用意していたペッシに声を掛けると、彼は一瞬驚いたがすぐに笑顔を僕に向けた。
 オレが一番下っ端だからこういう事はオレの仕事なんだって笑う彼に、実は僕は酒が弱い事と何か作ろうと思ってた所だったと話した。
「オレもあんまり強くないんだよ。プロシュート兄貴に、まだまだ半人前だからだって叱られちまったんだよなぁ」
 そうやって照れるペッシと一緒に、僕も何品か作った。なにせツマミだけだったものだから、お腹がなかなか満たされていなかったのだ。冷蔵庫に入っている物で簡単におかずを作り、冷凍されていたピザも温めてテーブルに出せば、次々にと無くなっていくのだった。

 騒がしくも賑やかな宴は終わり、散らばったゴミを片付けてグラスを洗い終わった頃だった。
「凜はあまり飲まなかったんだな」
 低い声が背後から聞こえ後ろを振り向けば、いつの間にかいなくなっていたリーダーがいた。
「お酒飲むとすぐに眠くなっちゃう体質なんです。だから、片付けてから最後に一杯飲もうかと思って……」
 別に用意していたお酒と、残っていた料理をリーダーに見せた。
「良かったら、最後の一杯付き合ってくれませんか?」
 ダメ元で頼んでみると、リーダーは一つ返事で承諾してくれた。
 僕たち二人だけの囁かな飲み会は、特に言葉を交わさず仲間達のイビキだけが聞こえる静かなものだったが、不思議と居心地のよい時間を過ごしたのだった。
  
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