20の後の後の話し。
 リーダーから逃げだすようにシャワールームに飛び込むと、直ぐ様ロックをかけた。まだ手が震えていて、心臓が飛び跳ねている。
 リーダーは一体どうしたのだろうか、傷の事をそんなに気にしていたのだろうか。任務後の時は、特に変な様子などなかったのに……今頃?あまりの事で、僕の頭はグルグルと混乱してばかりだ。口づけされた部分をそっと触れると、さっきの事を思い出しまた顔に熱が集まるのを感じた。こういう時は……そう、頭を冷やして冷静になればいい。ちょうど血で汚れてしまったのを綺麗にしたかったのだから、そうすればいいのだ。

 引き裂かれた服は、どっちにしろもう着れそうになかったから捨てる予定だった。いらないビニール袋にそれを詰めて、いつも寝間着にしている高校の時の名前刺繍入りジャージを着た。さて、どんな顔をして出てくればいいかな。
 僕の心配はどうやら杞憂だったようで、シャワールームからそろそろと部屋に戻ると大の男達はそれぞれベッドで死んだように眠っていた。メローネはいつの間にか部屋に戻ってきて、酒の臭いをプンプン漂わせてイビキをかいて眠っていた。リーダーはベッドにうつ伏せになっていた。なんだかんだ二人共疲れていたのだろう。起こさないように、寝支度を整えてそっと電気を消したのだった。

「まだ少し時間があるので、皆にお土産でも買っていきませんか?」
 ホテルをチェックアウトし、二人にそう提案してみるとメローネはそうしようと乗ってきた。
「あまり沢山は買えないぞ」
 そう渋るリーダーに、定番かもしれませんが皆が好きなお酒とおつまみでどうです?と言えば、少し考えた後に承諾してくれた。
 ――ここジェノヴァでよくお土産の定番化とされているのは、パスタにペーストにフルッタ・カンディータにオリーブオイル。
 パスタは、ネアポリスでも手に入る。ペーストは、所謂『ジェノベーゼ』でバジルや松の実などを使った物で美味しいと有名だが、色々と気に食わないので除外だ。
 フルッタ・カンディータってどういう物だ?と思うと、苺や桃に洋梨などフルーツを砂糖漬けにした物。職人の味が光ると言われ、有名店が出している物が空港にも置かれているのはありがたい。そしてオリーブオイルは、ジェノヴァにあるリグーリア州から良質なオリーブを取れる事によって質が高いとか。
 リーダーとメローネがワインを選んでいる間、僕はこの砂糖漬けの果物とオリーブオイルをお土産に選んだのだった。
「凜、こっちは終わったよ……何買ったの?」
「フルッタ・カンディータにオリーブオイル」 
 それぞれが買った物をお互いに見せあい、僕らはネアポリスに戻ったのだった。
 ――誰かにお土産を買っていくのって、結構楽しいのかもしれない。
 ちょっとばかし大変な思いをしたが、悪くない出張だったと思ったのであった。
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