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貴方達と過ごす年越し


『1月1日を新年と決めたのは、イタリアのローマ教皇である』というのを書籍で読んだことがある。
 この国に来て最初の年越しを経験をした時に、街中の賑やかさに酷く驚いた事が懐かしい。此処を大晦日では、あっちこっちに食器が割れる音が鳴り響き、石畳の上にはコップやら皿やらの破片が散らばっていた。そして、年を明けると今度は爆竹の音で驚かされる。最初は銃撃かと酷く慌てた事もあって、年越しは厳かに過ごす日本とは違うんだなと一つ勉強にもなった。
 そんな事を考えながら、正月用のレンズ豆をトマトソースで煮たレンティッキェというのと、カピトーネという鰻を使った料理をホルマジオ達と作っていると、一階のガレージから賑やかな声が耳に届いた。
「全くあいつらは本当にうるせぇ奴だな」
 いつもの口癖と共に、呆れたような事を言っていると勢いよくリビングのドアが開いた。
「聞いて聞いて! 探していた男用の真っ赤なTバックをようやく見つけたんだッ」
「オレはもう二度と、あんな気色悪い店行かねぇぞッ! ほとんど布がねぇじゃねぇか」
「うるせーぞガキ共。オレはすでに赤いボクサーパンツを購入済みだぜ。こういうのはな、店が閉まっちゃう前に予め購入しとくもんだぜ。買うと決めたらすでに行動は終わっているんだ」
「流石兄貴ぃ」
 帰ってきたメローネとギアッチョに対して、熱弁するプロシュートと尊敬な眼差しで見るペッシを尻目に、ソルベとジェラートは買ってきた酒をテーブル一杯に乗せている。
「レンティッキェとカピトーネは、だいたい大丈夫だよな。後は酒のつまみと、サラダとかあるといいな」
 作業中の手元を覗いたイルーゾォが冷蔵庫の中からレタスを取り出した。三人でやるから作業がちゃくちゃくと進んでいく。
「リゾットの奴はまだ帰ってこないのかよ。年が明けちまう前に帰ってほしいもんだぜ」
 そんな事を言いながら、穏やかな時間が過ぎる。

「今年も残り僅かだが、今年もみんなよく働いてくれた。来年も一人欠ける事なく……」
「おいおいおいッ。リゾットリゾットよぉ〜お前の演説聞いてたら、せっかくの料理が冷めちまうぜ」
「そうだぜ。せっかくオレら3人で拵えたんだから、食べようぜ」
「酒もたんまり買ってきたよ。酒が無くなるのが先かみんなが潰れるのが先か」
「それに、赤い下着も身につけたし」
「腹減ると苛々してくるからよぉ。早く乾杯しようぜ」
「それでは、リーダーお願いします」
 次々上がる抗議の声に苦笑しながらも、リーダーがグラスを持ち上げると、それに続き全員グラスを持った。
「それじゃあ、皆」
「「Felice anno nuovo(新年が良い年でありますように)!」」
 


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