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貴方と過ごすナターレ


『君さえよければオレと食事でもしないか? もうすぐ年末で慌ただしくなるから、その前にどうだろうか?』
 任務の報告で寄った本部からの帰り、ばったり出くわした彼からのお誘いに、二つ返事をすれば、彼は嬉しそうに頬を緩ませた。

 11月の最終末からイタリアではナターレの準備に取り掛かる。広場には大きなツリーが飾られ、雑貨屋にはツリー用の可愛らしいオーナメントや雑貨品が売られるようになり、シンプルだが街にはイルミネーションが取り付けられるようになる。そして12月になれば、ナターレに向けての準備は本格的になるのだ。
 そんなどこか浮足立つ街並みを歩き、待ち合わせ場所に向かう。教会前を通れば、聖歌隊が練習している歌声が聞こえ、玩具屋の近くを通れば子供へのプレゼントなのか、大きな包を持った男性にすれ違う。クリスマスにいい思い出がない自分でも、今ではなんだか心浮き立つ気持ちになる。

「こんばんは、ブチャラティさん。待たせてしまいましたか?」
「いいや、オレも今来たところだから大丈夫だ」
 待ち合わせ場所の大きなツリーの下には、いつものスーツでなく、シックなスーツ姿が様になっていて素敵だった。
「今日の服、君によく似合っている」
「ありがとうございます。ブチャラティさんも素敵ですよ」
 なんだか恥ずかしくなってしまい、照れながらも答える。
「お手をどうぞ。今日はオレが君をエスコートさせてもらうよ」
 その自然な動作に戸惑いながらも、差し出された大きな手を取った。

「「乾杯」」
 チンッとグラスを合わせ、泡立つ綺麗なシャンパンを飲む。
 エスコートされた先は、なかなか有名店で美味しいと評判のあるリストランテだった。組織が管理している店で、幹部の特権で、自分たちが案内された席はVIP用の個室だった。
 心地の良い音楽が流れ、ゆったりと落ち着いた雰囲気があった。この個室の隅にもセンスの良いオーナメントが飾られたツリーが置かれていた。
「そういえば、もうすぐナターレか。一年っていうのはあっという間だな」
「そうですね。ここ最近はバタバタしていたから、特にそう思います」
 すると、彼は何か思い出したかのように、ゴソゴソとポケットから小さな包みを取り出した。
「実は、前に店先でこれを見かけてね。君に似合いそうだったから思わず買ってしまったんだ。よければ受け取ってもらえないか?」
「気が合いますね。実は私もブチャラティさんにプレゼントがあるんですよ」
 もうすぐナターレだから、それでと食事を誘われた次の日に買っておいたのだ。お互いに渡すプレゼントを見せ合うと、なんだか面白くなって二人で笑った。
「改めて、乾杯しておくか。少し早いけど」
「「Buon Natale!」」

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