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貴方とするショッピング


 休日いつものように日頃の疲れを取るべくベッドに潜り寝ていると、呼び鈴を連打する音で起こされた。こんな早朝に迷惑だと文句の一つでも言おうかと思いドアを開けると、そこにはいつ休みなのかわからない美しき恋人が立っていた。
「プロシュートっ……! ど、どうしたの? 来るなら言ってくれてもいいのに……」
「驚かせたくてな。たっく、休日だからって寝腐ってるのは勿体無いぜ。出かけるぞ、支度しろよ」
 私のボサボサ頭を優しく撫でると彼はソファーに座る。久々に会えた嬉しさと、頭を撫でられたせいで顔がニヤニヤしてしまう。余韻に浸りたいところだが、彼を待たせるのは申し訳ないので慌てて支度をした。私のそんな様子が面白かったのか、プロシュートに笑われながらこの服にしろよと、コーディネートをしてもらった。

 彼に連れられて来たのは、大きなショッピングセンターだった。久しぶりに来たが、今日はやけに人が多い気がした。
「この時期は年に二回のセールだからな。良い物残ってればいいが」  
 なるほど、だからいつもプロシュートに送られる視線が少ないのか。歩く女性は今は色男よりも値引きされたお目当ての服に集中している。いつもは彼に向けられる視線がちょっと好きではないが、今日はあまりないからのんびりデートできるのは嬉しかった。
 のんびりできるかと思いきや、店の前を通る度に店内に入ってアレコレ試着しろとプロシュートがチョイスした大量の服やら靴を脱いでは着ての繰り返しだった。一日に何枚もの服を着なくてはいけないモデルさんはかなり大変そうだなと、身を持って知った。少しくたびれた私とは反対に、両手一杯に紙袋を持ったプロシュートはとてもご機嫌そうだった。
「ありがとうプロシュート。こんなに沢山買ってもらっちゃって、なんだか悪いなぁ」
「気にする事なんてないぜ。オレが好きで買ったんだからよ……あそこの店で休憩するか」
 
 私たちは飲み物と軽食を頼み、テラス席に座った。ショッピングを楽しむ人々を眺めながら私達は、普段会えなかった時間を埋めるように会話に華を咲かせた。仕事が忙しいプロシュートを咎めたりするつもりなど毛頭なかったが、寂しくないと言ったら嘘なのだ。本当はもっとデートもしたいし、一緒の時間を増やしたかった。
「……いつもなかなか連絡できなくてすまない。本当はもっとこうやって一緒にいたいんだ」
 会話の間にあるちょっとした沈黙ができた時、ポツリとプロシュートが呟いた。そんな彼の顔は普段の自信満々な表情とは違い、どこか寂しげだった。
「ううん。プロシュートが忙しいのわかってる。大丈夫、私はいつもあの家にいるからいつでも帰ってきてね」
 彼も私と同じ気持ちだったんだと嬉しくなり、ほころぶ頬を誤魔化す為に料理を口に運ぶと、そっと手を重ねられた。
「これ、お前に持っていて欲しいんだ。少しでもオレが傍に居るんだと思ってほしい」
 渡された小ぶりの箱を開くと、シンプルだけど綺麗な宝石が埋まっている指輪が収まっていた。
「プロシュート……これっ」
「次に渡すのはもっとちゃんとしたヤツにするからさ、とりあえず受け取って欲しい。次に渡す時は、これに比べ物にならない物と言葉を贈るから、ずっと傍にいてほしいんだ」
 頬を赤らめながらも目はとても真剣だった。そんなプロシュートを見て、綻んだ頬とうっすら浮かべた涙を隠すことはできなかった。


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