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4:桃色のほっぺ


 貴女ほどピンク色が似合う女の子は、きっとこの世界中で限られたうちの一人だと私は思う。
 彼女トリッシュ・ウナは、少し癖のある『ローズ・ドゥ・パリ』色をした髪の毛を初め、メイクから服装までピンク色を中心に全身をコーディネートしている。普通ならば全身ほぼピンクなんてクドくて見れたものではないが、トリッシュは違う。ピンクと言っても、淡かったり濃かったりと色合いの層を上手く使い分けている。私の美的センスでは絶対に上手くできないので、センスの良い彼女を尊敬している。
「なぁーに? さっきからジロジロ見て……雑誌読むのに集中できないわ」
「えっ? あぁ……トリッシュは相変わらず可愛いなぁって思っていただけよ」
 気が抜けたようにソファーに横たわり雑誌を読んでいるのを幸いに、私はじっと見つめすぎていたらしい。怪訝な目をして、分厚くセクシーなその唇から文句を吐くトリッシュは本当に愛くるしい。
「なに考えていたの? 怪しいわね……」
 私の返答が気にかかるのか、トリッシュは桃色の頬を膨らませて納得できていないような表情をした。私はその動作を見て、ドキリと胸を高鳴らせる。なぜなら、私が彼女の顔の中で一番好きな部分がほっぺただ。白磁のような肌に完熟した桃のような色が実に映える。そして本当に桃のように柔らかいっていうとこも良いし、怒ったように膨らませるとさらに強調されるのだ。思わず我慢できずに、そっと手を伸ばして傷つけないように優しく触った。
「本当だよ、あまりに可愛すぎて見ちゃってたの」
 肌触りを確かめるようにスルスルと撫でると、トリッシュは驚いたような顔をして小さく馬鹿と呟いて私から目線を外す。悪態を付きたい癖に、本当は嬉しくて照れ隠ししている事なんてお見通しだ。触れている頬が熱を持ち、桃色から赤へと変化していく。キラキラと煌くエメラルドの瞳とよく似合って、宝石箱に入れておきたくなるほど美しかった。
「……貴女だって可愛いわよ」
「ふふっ、ありがとう。でも、トリッシュには負けちゃうな」
 彼女からのお褒めの言葉に、私は気を良くしながらも触れていた頬にキスをした。赤ん坊の頬に負けないぐらいに柔らかく、熱帯びていたそこは更に熱くなっていた。私がトリッシュにキスをすると、いよいよ彼女は恥ずかしいのか黙ってしまった。これ以上甘い言葉でトリッシュを弄り倒すのは勘弁してあげようと思い、背後に回って自分よりも華奢な身体を抱きしめる。服越しから伝わる体温が心地よかった。
「ねぇ、さっきから何の雑誌読んでいたの? あまり放置されると寂しくなるんだよなぁ」
 さっきまでトリッシュが読んでいた雑誌を取り上げてみると、ファッション雑誌の最新刊だった。中をペラペラと捲りあげると、有名ブランドのコーディネート特集から年頃の女の子が好きそうな可愛らしい雑貨物にメイク用品なんかも載っていた。
「……貴女と何かお揃いな物が欲しくて。……何がいいかなって探していたのよ」
 すっかり大人しくなったトリッシュは、どこか観念するように素直に教えてくれた。背後から彼女の表情は読み取ることはできなかったが、耳たぶは頬のように赤くなり体温が高くなっていた。これはきっと恥ずかしくて顔全体も赤くなっているだろう。
「そうだなぁ……それじゃあ……」
『貴女と同じ頬の色になるチークが欲しい。』その言葉は直前で飲み込んだ。適当に捲ったページに載っていた物に指さして、こういうのはどう?と誤魔化すように聞いてみればトリッシュは明るい声を出して同調してくれた。
 真似事してまで同じ色にしても全く意味なんてないのだ。トリッシュだからこそ価値のある色だ。これからする楽しい事にはしゃいでいるトリッシュの頬色は、誰よりも美しく眩しかった。

【お題サイト『きみのとなりで』あなたの色で5題から】

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