121:『運命なんて、くそくらえ』


(※Twitter未公開)


元々人間以外の、それも敵であるフェストゥムの因子を宿して生まれてきた。
コアを護り島を護り皆を護る存在だと定められ、少な過ぎる選択肢の中で自らの撰び取った物を信じ、拙いながらも自分と言う「人間」を作り上げた。
砕け散って舞い戻ったこの身体は既に「人」とは呼べなかったけれど、悲しくて優しい生と死の循環への回帰は、人としての最後の矜持。
そしてそこに帰るのは一騎も一緒でなければならい。そうでなければ何の意味もない…
なのに安らぐ事のない永遠の戦士へと、まるで戦い続ける運命なのだと言わんばかりに、総士から一騎を取り上げようとする言葉。


「運命なんて、くそくらえだ」


握り締め爪が深く食い込む拳を震わせ、総士は冷めた目をして吐き捨てた。


122:『遊び疲れて一緒に爆睡』


(※Twitter未公開)


楽園の扉を開けると椅子に座り膝の上に美羽を乗せ、二人仲良く爆睡している一騎の姿が目に飛び込んできた。
傍らにいた真矢が人差し指を唇に当てて、総士に静寂を促す。
それに頷き声を潜めて問い掛ける。


「これはどう言う状況だ?」

「お姉ちゃんの用事が済むまで美羽ちゃんを預かってるの。一騎くんが絵本を読んで遊んでくれてたんだけど…」

「途中で疲れて眠ってしまったと言う訳か」


あどけない二つの寝顔に思わず口元が緩んだ。




(※補足:たまにはほのぼの路線で)





123:『こうするしか、なかった』


(※Twitter未公開)


「すまない、一騎」

ぼんやりと床に座り込み頭から白濁に塗れた一騎に、総士は悲痛な眼差しを送る。


「いいんだ、総士」

「僕の不注意だ、まさかこんな事になるなんて…」

「ううん、多分こうするしか、なかった…」


纏わり付く白い液体で汚れた手を眺め一騎が力なく微笑む。


「僕がぶつからなければ、もしかしたら生きて腸まで届いたかもしれないのに…」


悲嘆に暮れる総士の後ろで我慢し切れず剣司が噴き出す。


「お前ら賞味期限切れのヨーグルトぶちまけた位で、何深刻な雰囲気醸し出してんだよ」




(※補足:まだ飲めるか?それとも処分しようか?迷って期限切れのヨーグルト持ってウロウロしてたらこうなった)





124:『もうなにも言うな』


(※Twitter未公開・一総?)


疲れ切ってヨレヨレで、せっかくの綺麗な顔が台なしだ…と言いかけたが、元々の美貌に影が加わり盛大な色気に変換されてしまっている。
この状態でここまで歩いて来たのかと、一騎は訪ねてくるなり肩口に額を埋め、体重をかけ抱き着いてきた総士に少々呆れた。


「一騎…、ねむい…つかれた…」


呻くように呟かれた言葉に苦笑いしながら、寝不足からか艶を失っている長い髪を指先で梳いて甘やかしてやる。
何か言いた気にうにゃうにゃ声を発しているが、眠りに片足を突っ込んでいる状態で言葉を成していない。


「起きたら聞いてやるから。もう何も言わなくて良い、おやすみ総士」


125:『とっくに知ってるよ』


(※Twitter未公開)


消えて薄れてゆく感覚に、ああこれで最後なんだなと、悲しみと淋しさとほんの少しの安堵が湧いた。
ずっと耐えてきた事を、ずっと秘めていた事を、ずっと叶わなかった事を、ずっと隠してきた言葉を…
今ならば口にしても許されるだろうか?
そして二人同時に唇を開く。


『一騎(総士)、ずっと僕(俺)だけのものになって欲しかった』


意識が無くなるその一瞬、二人の視線が交わって淡く笑い合う。
そんなこと…、もうとっくに知ってた――と


126:『声も出せない』


(※Twitter未公開・14歳総士と19歳一騎)


「ありがとう」


僕を引き寄せ抱きしめた彼は随分と背が高く、髪も肩に付く程長くて、それでも、目の色だとか声音だとか面影で直ぐに誰だか分かった。
僕を見ていつも怯えを含む目は優しく、僕を呼ぶ時常に不安を含む言葉が柔らかく、僕を理解出来ずに全身で苦しんでいる様子なんて微塵も無く、ただ穏やかに慈愛を滲ませる。


「もし昔の総士に会えたら、ずっとこうしようって決めてたんだ」


偉いな、良く頑張ってる、お前が一人で耐えてくれた時間があったから、今の俺達は未来で一緒に戦える。
そう囁かれ、嗚呼彼のいる未来でも戦いは終わっていないのかと言う絶望と、同時に彼が僕の全てを理解してくれる日が訪れる事への安堵で、声も出せないままに泣き崩れた。


127:『わたさない』


(※Twitter未公開)


「たくさんの敵の命を奪ってきた。返せるものは返すよ」


一騎のあの言葉が頭から離れ無かった。
敵が侵入した事を美羽が悟り、フェストゥムの森からキャンプ地へ戻る車内で、総士はずっと苛立ちが抑えられないまま何度目かの溜息を零す。


「どうしたんだ総士、何か怒ってるのか?」


当の本人がけろりとした表情でこの調子なものだから、とうとう舌打ちをしてしまった。
自分も一騎も、確かに数え切れない程に敵の命を奪ってきた。
いまさらその報いが何も無いだなんて思ってはいないけれど、それでも、


(僕はもう誰にも一欠片でさえ、お前を渡したくはない)


128:『全部、全部、君のせい』


(※人妻真壁さんがお題)


人の物程何とやらと言うが、誰かの物になる前から穏やかで健気で、だから無残に汚したくなる。
どうして?何故?信じてたのに!と床に組み敷かれて嘆く一騎は憐れで可哀相で、そして何より美しかった。
だから本当の事を教えてやろうと総士は思う。


「こんな風に僕を狂わせたのは全部、全部、お前のせいだ」


と――




(※補足:人妻な真壁さんと間男な皆城さん。多分人妻の解釈間違えてる(笑))





129:『不意打ちで言うのはやめていただけますか』


(※Twitter未公開)


取り留めの無い会話の最中、急に黙り込みじっと一騎の顔を見詰める。
話すのに夢中だった一騎は、しばらく一人で喋っていたけれど、途中で総士の返事が無い事と向けられている視線に気付く。


「どうしたんだ?」


ひらひらと目の前で手を振ってやると、総士は真面目な顔をしたまま、


「いや、一生懸命僕に話しかけてる姿が可愛らしいと思っただけだ」


不意をつかれた一騎の顔が、みるみる赤く染まった。


130:『僕は一生、恋をしない』


(※Twitter未公開・無印)


「…恋、特定の相手を強く慕うこと。切なくなるほど好きになること。また、その気持ち……か」


口に出した言葉は脳裏にたった一人の顔を過ぎらせ、胸の内が小さく痛む。
けれどそれを認めてしまう訳にはいかないのだ。
自分に課せられた優先順位は変えられないし、島とコアのために生きる事しか許されていない。


(この気持ちは名前も付けずに葬らなければ…)


きっとこうして自分に言い聞かせ続けねばならないのだろう。何度も何度も…

この先一生、『いなくなる』最後の瞬間まで…