(※16歳:Twitter未使用)
『服従し支配されなさい』
生まれた時からそう言い含められてきた。なのに一騎はいつも逆の事を望む。
「一騎!」
「ッ…、これ位平気だ」
「だが」
「大丈夫、俺はお前のサクリファイスだろ?」
「違う、僕がお前のモノなんだ」
鎖と苦痛に繋がれ一騎は少し悲しそうに微笑む。その優しさが敗北を招くとも知らずに。
(※16歳)
「一騎に触るなッ!」
四肢の自由に視界まで奪われ、地に伏した一騎へ駆け寄る。
守り庇いながら抱き締め、殺気を放ち総士は敵へ吠えた。
サクリファイスは名の通り犠牲。
戦闘のダメージは鎖や首輪と言う拘束具に具現化される。
それらに行動不能なまでに完全拘束される事は、則ち敗北を意味する。
(※16歳)
「一騎、怪我は?」
戦闘を終えると体に触れながら確認される。
「怪我も何も、俺見てるだけだったし…」
敵が可哀相になる位に総士は容赦が無かった。
「当たり前だ。もう二度とお前に傷を負わせない」
「犠牲は俺の役目だろ?気にするなよ」
「いや、僕は気にする」
一度敗北してからと言うもの、総士の過保護が悪化した。
(※16歳)
「一騎、これを」
渡された携帯端末。
「何で?」
「お前が淋しくないように、これで僕を繋ぐといい」
手の中の携帯と総士を見比べる。
「いつでも、一騎からの電話なら必ず出る」
「必ずなんて無理だろ?普通」
「試してみれば良い。僕はお前のために生きてる、出来ない事は何もない」
(※16歳)
触れた唇に一騎のアンバーの瞳が濡れた。
「僕に力をくれ」
囁き指を絡めて繋げば、当たり前に握り返され満たされる。
そう、自分達はどんな二人より強い絆で結ばれなければならない。
「体も心も魂も命も全部捧げて一騎のために戦ってやる。だから早く僕に命令しろ」
(※16歳)
「これで僕をお前のモノにして欲しい」
渡されたピアッサー。
「俺にまた、総士を傷付けろって言うのか?」
悲痛な面持ちで、幼い頃に自分が付けてしまった総士の左目の傷を見詰め唇を噛む。
「お前のモノだと言う証が欲しい」
そう返されて、
「…分かった。その代わり俺にも同じ様にお前がしてくれるなら」
「それは命令か?」
「…め、命令だ」
だってお揃いが良い。
(※16歳)
「あれは絶対、一騎に色目を使っていた」
不快感に眉を寄せる。
「総士こそ、いつも言い寄られたりしてる…」
嫉妬を含んだ眼差しで返す。
「僕は一騎以外に興味はない」
「俺だって総士だけ居ればそれで良い…」
「…ならいい」
「俺も、ならいい…」
そう言って二人は睦まじく指を絡めた。
(※16歳)
戦闘において名が違うパートナーなら力は半分、犠牲無しで戦闘機一人挑めば更に半分に制限される。
(今、一騎がいなくて良かった。この敵は危険過ぎる)
戦況は限りなくこちらに不利で、けれど挑んできた相手の言葉で総士の口許に笑みが浮かぶ。
「いい言葉だ『存在を無に還す』か…」
(※16歳)
「総士、おかえり」
珍しく自分の側に居なかった彼を出迎え、直感的に一騎は違和感を覚える。
「何か…変だ」
「何でもない…」
「嘘だ」
隠し事をされている、近付き手を伸ばせば、
「触るな、一騎が汚れる」
拒絶と同時に赤い雫が床に落ちて一騎は絶望した。
「…まさか一人で戦ったのか?」
(※16歳)
総士が一人で戦った。
戦闘機を一人で戦わせのは恥とされる。番いなのに繋がっていない…
自分は役に立たないサクリファイスなのだろうか?
酷い吐き気に一騎は苛まれる。
「…っ」
「大丈夫か?一騎。恐らくストレスだな…。吐き気がくるほど何が怖いんだ?」
優しく抱きしめられても言葉に出来ない程に恐怖だった。
(お前をなくす事だよ、総士)