【初めて会った日の事は、】


(総士Side※幼少期)


「真壁一騎、です」


引き合わされた瞬間、生まれた時からずっと聞かされていた通り、本当に自分は彼の所有物なんだと唐突に本能で理解した。
説明のつかない強く深い結び付きが、唯一無二の存在と真実の名前をくれる。
あの時から総士にとっては一騎だけが自分の全てで、この世界のルールになった。


【二人だけの思い出】


(一騎Side※幼少期)


「皆城総士だ。一騎、ずっと待っていた」


そう告げた少年に思わず息を飲む。
彼は敵と戦うため言語を具現化出来る戦闘機。自分はダメージを請け負うサクリファイス(犠牲)だ。


(ああ、この子じゃなくて俺が犠牲で良かった)


こんなに美しい存在が傷付くのは、きっと耐えられないから。


【二人だけの名前】


(※14歳)


対となる存在には二人だけの名前がある。
誰が決めたのか生まれる前から決まっていて、運命の様に選べない二人だけの特別な絆。それは身体の何処かに文字となって浮かぶ。


「一騎、名前が出た」

「そっか、俺も」

「何処に出た?」


答えるのが躊躇われる場所で、一騎は頬を染めた。


「一騎の名前が見たい。駄目か?」


「…駄目じゃない。総士になら全部見せるよ」


全てを見せる覚悟がないと、サクリファイスにはなれない。

【ミミとシッポの意味】


(※幼少期)


「オトナになったら、俺のミミとシッポは総士にあげる」


無邪気に猫耳をひょこひょこ動かし一騎が笑う。


「一騎、意味を分かって言っているのか?」

「へ?」


溜息に続く言葉は飲み込む。


(僕と一つになるって事だぞ…?)


猫ミミとシッポはコドモの印し。性交渉するとミミやシッポは落ちてオトナになる。


【続・ミミとシッポの意味】


(※14歳(総一総?))


「総士のミミとシッポ綺麗で好きだ」

「お前にならあげても良い」

「くれるの?」


嬉々とする一騎を壁へ手を付き囲う。


「お前になら抱かれても良い」

「?、そんな事位すぐ叶えてやれる」


優しい触れるだけの抱擁を贈られ、総士は苦笑した。


「やっぱりこのオチか。…一騎お願いだ、いつか僕を抱け」


【ミミとシッポの行方】


(※16歳(総一総?))


「駄目だ一騎。これ以上したらミミが落ちる」


行き過ぎた接触を図る一騎を制すると、


「俺はもういつミミを落としたって構わないけど、総士のこの綺麗なミミとシッポが見られなくなるのはまだ少し惜しいかも…」


なんて、それはこちらの台詞だと総士は心底思った。


【戦闘機】


(※14歳)


戦闘機は人であって人として扱われない。
支配され服従し、サクリファイスを守り戦うための武器であり道具。


「僕の事は人として扱わなくて良い。物だと思え」


そう言うと酷く悲しそうな顔で頑なに一騎は首を横に振った。


「絶対に嫌だ、お前は物じゃない。総士は総士だ!」


【サクリファイス】


(※16歳)


本来支配し所有する存在。
言語による闘争であるスペルバトルの戦況を見定め、指示を出し従わせるのがサクリファイスだ。


「お前は僕を調教する立場だろう?」

「そう言うの向いてない。総士に従う方が俺は好きだ」

「戦闘機に支配されたがるなんてどうかしてる」

「総士が望むなら、俺は何だってしてあげたいんだ」


【宣言】


(※16歳)


酷い耳鳴りに総士は思わず猫耳を伏せる。
領域が解放されすぐに敵が来るだろう。
緊張した面持ちの一騎の手を握る。


「一騎、命令を」

「…俺の望むものを取って来てくれ、総士」

「了解した。これは言葉による闘争である事を宣言する。システム、展開」


隔離された世界に飲み込まれる。


【役目】


(※16歳:Twitter未使用)



ダメージを請け負うのは肉体的にも精神的にも、かなりの苦痛を伴う。
まともな相手なら拘束具で戒められる苦しみだけで済むが、場合によっては流血したり身体を損傷させられる事だってある。
だが、総士が受けるはずだった痛みだと思えば、一騎は何だって耐えられた。


「大丈夫、ッ……まだやれる。総士のダメージは全部俺が引き受ける……」






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