(※19歳:Twitter未使用)
「一騎、お前、ミミはどうしたんだ!?」
カノンが悲鳴に近い声で叫ぶ。
昨日まで確かにあったはずの一騎のミミとシッポが無い。つまり…
「あ…、うん。総士にあげたんだ」
当たり前の様にそう答えられ、良く見ると腰を庇いながら歩いている姿に目眩を覚える。
同じ名前の運命の二人だ、いつかこうなる事は分かり切っていた。
(※19歳:Twitter未使用)
「総士、お前ミミって…愚問だったな。一騎もか?」
剣司が総士に問う。
「ああ、僕が落とした」
「じゃあ今頃みんなパニック起こしてるだろうな…」
そう言うと総士は苦い顔で溜息を零す。
「一騎は誰からも好かれ過ぎだ」
「確かに愛されてるよな。まあ、死なない様に頑張れよ総士」
「覚悟の上さ…」
(※19歳:Twitter未使用)
「お帰り一騎」
「ただいま」
離れていた時間を埋める様に、駆け寄り手を重ね互いの存在を確かめる。心なしか一騎の元気が無い気がして総士は首を傾げた。
「どうした?」
「うん…、ミミが落ちた事カノンに泣かれた」
眉を下げた一騎の眉間に、総士は唇を落とす。
「後悔してないか?」
「まさか。これでやっと全部総士のモノになれたんだ、後悔なんてしない」
「そうか」
「うん」
(※19歳:Twitter未使用)
一騎の頭に先日落としたはずのミミがくっついている。
「付けミミか?」
「うん、皆が混乱するから暫くは付けなさいって遠見先生が。総士の分も貰ってきた」
自分の髪色と同じ付けミミを差し出され、少し苦い表情を浮かべる。
「もう19だ。オトナになっててもおかしくない歳なのに、みんな一騎には過保護だな。」
「総士?」
「何でもない。ただの独占欲だ。」
(※19歳:Twitter未使用)
「やっぱりミミがある方が良いのか?」
「いや、そう言う訳じゃない…。ただ、何と言うか…背徳感がだな…」
付けミミを凝視する総士の心情を、一騎はどうにか読み取ろうと必死だ。
「一騎?」
未通の印しのミミのある自分と、オトナの証でミミの無い総士。それが好みだと言うなら、望みは何だってかたえてあげたい。多分間違ってないはずと、一騎は怖ず怖ずと口を開いた。
「…あ、えっと。総士が望むなら、……付けミミしたままシてみるか?」
動揺した総士が思いっきり噎せる。間違いではないが、正解でも無かったようだ。
(※16歳:Twitter未使用)
一騎はいつでも総士に対し従順であろうとする。
元々の気質もあるだろうが、きっと幼い頃不慮の事故で総士の片目に傷を付けてしまった罪悪感が大きい様に思う。
ダメージを請け傷を背負う役目のサクリファイスなだけに、自ら傷を付ける事は一騎にとっては酷い暴力としてトラウマになっているのだろう。
「でも、この傷も、コレも僕にとっては暴力じゃない。所有の印しで、絆だ」
愛おしみながら左目の傷を指先で辿り、一騎が開けた耳のピアスにも触れ、総士は幸せそうに笑う。
(※16歳:Twitter未使用)
贈られたピアスは青い蝶のモチーフだった。
総士によって穿たれたピアスホールを飾るそれは、一騎にとって楔の様に思えた。
決して解けて離れないように、深く打ち込まれた絆。
「今なら少しだけお前が思う傷の意味が分かる気がするよ、総士」
それでも彼の美しい顔に、醜い傷を付けた過去の自分を許す事は出来ないけれど…
(※19歳:Twitter未使用)
戦闘機の攻撃や防御の威力は、語彙と言葉の選択や連係が重要だ。的確に敵のスペルに対応し、揺らがない精神の安定が求められる。
戦闘機として総士は、まさに理想的で優秀だ。
「俺、必要無いんじゃないかって位に総士は凄いんだ」
それを聞いて剣司は総士の報われなさに苦笑を浮かべ、
「総士があれだけ強いのは全部お前のためだろ?」
「うん、知ってる」
「……惚気話なら他でやってくれよ」
どうやら杞憂だったらしい。
(※19歳:Twitter未使用)
深い夜を切り取った濃密な闇の中、哀れな敵は透明で澄んだ結晶に侵され身体の自由を奪われる。
虚無の中で緑に輝く透明な燐光。儚く砕け散って無に還る光景に、心惹かれて止まない。
総士のイメージする言葉(スペル)はいつも残酷で冷酷で、そしてとても美しかった。
「ちょっと羨ましいかも…」
「何がだ?」
「総士の言葉に侵されて、傷付けられてるのが」
「問題発言だぞ…」
「そう?でも、俺、総士のになら何されても嬉しいから」
(※16歳:Twitter未使用)
同じ名前で結ばれた者は二人で一つ。
戦闘機とサクリファイスは、離れては生きていけない様に出来ている。
「もし、一騎の足手まといになるくらいなら僕は迷わず死を選ぶ」
「総士!」
「もしもの仮定の話しだ。そう怒るな」
「総士が死んだら俺も死ぬから、もしその時が来たら二人で死のう。置いていくなんて許さない」