051:『僕だけの秘密』
ちょうど襟足にあたる場所。伸びた髪で隠れて見えない一騎のそこに、総士は赤い花を継続的に咲かせ続ける癖がある。
ベッドで一騎が正体を失っている時を狙って、その秘められた場所へ鬱血を残すのだ。
別に深い意味は無い。
ただその身に跡を刻まれている一騎本人さえ知らない。
そう、これは僕だけの秘密だ。
052:『君とキスがしてみたい』
自分でもどうかしてる自覚はある。
だが無意識に目が追ってしまうのだ。
「僕の顔に何か付いているのか?」
そう問われ慌てて目を逸らす。
「なんでもない」
「最近変だぞ。言いたい事があるならハッキリ言ってくれ」
どうハッキリ言えと言うのだろうか。
総士とキスしてみたくて、つい唇に目が行ってしまうなんて。
053:『そうだったっけ、覚えてないや』
ベッドでの事を、翌日になって持ち出されるのは誰だって恥ずかしい。
だから、総士が言った言葉につい…
「そうだったっけ?覚えてない」
と返したのは照れ隠しだ。しかし…
「そうか、じゃあ思い出して貰うしかない」
世界が反転し一騎は総士に組み敷かれた。
「…ごめん嘘ついた。本当は覚えてる」
「残念だがもう遅い」
054:『長く一緒にいた影響』
多かれ少なかれ時を共有すれば、好みが似てきたり相手の心を察する様になったりする。けれど…
「一騎」
「あ、…うん。俺もシたいなって思ってた」
眉を下げ恥じらい微笑まれた。
一騎は名を呼んだ声色だけで、総士の意図を明確に理解してしまう。
長く一緒にいた影響と言うには、余りに察しが良すぎて困る。
055:『プレゼントは私』
「総士、あげる」
何かを差し出す訳でもなく一騎は言う。
「あげるって何をだ?」
問い返すと彼は己を指差し…
「俺を…、俺を総士にあげる」
「急にどうした」
「いらない?」
「いや、そう言う訳じゃないが…」
「総士は絶対俺だけのモノにはなれないだろ?だったら、俺が総士のモノになるしかない。だから貰って」
056:『Marry me?』
(※現パロ)
目覚めたら左手の薬指に、青いリボンが蝶々結びされていた。
不思議に思って解くと、銀色の指輪が姿を現す。
慌てて布団を跳ね除け起き上がると、隣で寝ていたはずの総士に後ろから抱きしめられた。
「これからは絶対に幸せにするから、僕と結婚してくれ一騎」
「うん」
(でも一つだけ訂正させてくれ。俺は今までも十分総士に幸せにして貰ってるよ)
057:『どうせ無意識なんだろ』
伸びてきた手が頬のラインを辿り、顎先まで滑らせ、皮膚の薄い場所を指の腹で撫でられる。
繊細で優しい所作、だけどそれだけじゃない。
触れられた部分から微熱に侵食される感覚。
「何かゾワゾワする…」
「擽ったかったか?」
(そうじゃない…。どうせ無意識なんだろうけど、総士の触り方は妙にえっちだ…)
058:『あまりの失態を犯し記憶喪失になりたいと頭を抱える』
(※成人現代パロ「お酒って怖い」って話」)
脱ぎ散らかされた衣類、互いの肌に散る鬱血跡。
目が覚めたら全裸で幼馴染みと同衾していた。
「あのさ…、総士…」
「…何だ?」
「……その、昨夜の事、覚えてるか?」
「すまない、一騎」
やってしまった。
混乱と自責に苛まれつつ、今すぐ記憶喪失になりたい…と思わずにはいられない。
泥酔した勢いで秘めた想いを打ち明け一騎に何をしたか、詳細に記憶が甦り総士は頭を抱える。
(※補足、お酒で失敗する駄目な大人の総士を書いてみたくて(笑)ハイスペック総士様の場合は、きっとこの状況を既成事実として一騎に結婚を迫りメロメロになるまでベッドで口説き落とす位はやってみせると踏んでますWww)
059:『ハプニングキスで恥ずかしがっている二人』
「総士」
「ッ!」
後ろから呼ばれ、振り返った拍子にうっかりぶつかった。
弾みで唇同士が触れてしまい…
「ご、ごめん…」
唇を抑え一騎は頬を染める。
「いや、気にするな…」
つられて総士も落ち着き無く視線を逸らす。
「少女漫画か。見てる方が恥ずかしいぞお前ら」
一連の流れに、剣司が呆れて溜息混じりに呟く。
060:『他の人の目にいれたくない』
「すまない監禁する様な真似をして」
同化治療の副作用で一騎の姿が14歳まで後退した。
けれど肌は異様に青白く、昔の溌剌とした面影は無い。
他人の目に触れさせたくないと、総士は頑なに一騎を隠した。
「大丈夫、守ってくれてるんだろ?」
今の自分と、皆の記憶の中にいる闘いを知らなかった頃の自分。二人の一騎を。