※フレンの出番なし



ザーフィアス城の一室。

馴染みの部屋だから、城の雰囲気に飲まれることもない。

ここは、ハイネがいつも定期検診(メンテナンス)を受けている部屋。

ハイネが扉を開いた時、室内には既にリタがいた。

時間より早く来たはずなのに、待たせてしまった。


「リタ、ごめん」

「何謝ってんのよ」

「だって、忙しい、のに、リタ、を、待たせた、から」


リタは笑う。

ハイネを安心させるように。


「……ありがとう」

「今度はどうしたの?」

「こういう、時、は、ごめん、より、ありがとう、の、方、が、いい。違う?」


不安を上手く表現できなかったが、首を少し倒してみた。

ハイネのそれを見たリタは、違ってないよと柔らかな顔をして見せた。

リタに促されて、ハイネは椅子に座る。


「で、最近どう?」

「最近?」

「外へ出かけてるんでしょ。何か新しい発見があったりした?」


リタに問われ、ここ数日を脳内のスクリーンで思い返す。

確かに、新しい発見は多かったかもしれない。

ハイネは一本ずつ指を立てる。

そして、出会いや学んだことを整理するように話した。


「そっか……」

「つまらない、話、だった? ごめん、ね」

「違うって。何て言えばいいんだろ。うん。予想以上に成果が見れたから嬉しくなったのかもね」

「嬉しい……?」


リタがそう思ってくれたのなら、話して良かったのかもしれない。

少し前の自分を反省しようと考えかけていたハイネは、それを抑え込んだ。


「よし、終わり。今日も元気よ」

「ありがとう、リタ」

「何度も言ってるけど……」

「わかって、いる、よ。何、か、あったら、リタ、に、連絡、する」


ハイネには何度も言わなくても大丈夫だとわかっているはずだ。

それなのに、リタは毎回確認するようにその言葉を使った。


「じゃあ、ね」

「ハイネ」

「何?」


呼び止められて振り向く。


「いっぱい楽しい経験をしてね。それが一番だから」

「うん。楽しい、の、好き。でも……」

「でも?」

「最近、フレン、と、あんまり、話、しない、から、ちょっと、えと、あの……」

「寂しい、んだね」

「……寂しい? うん、寂しい」


リタの言葉を繰り返す。

そして学ぶ。

こういう時に「寂しい」という言葉を使えばいいのだと。


「リタ、ありがとう」

「楽しいも、寂しいも、全部大切な気持ちだから。怖がらないでね」

「うん」


まだわからない感情が多い。

だから、少しずつ1つずつ知っていきたい。

ハイネはもう一度リタにありがとうと告げ、その部屋を出た。



リンク・リタ
(私の大切な先生)


2011/12/07
加筆修正 2013/09/18



 

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