※フレンの出番なし



数日続いた雨が上がり、綺麗な青空が広がっている。

風もとても爽やかで屋内に閉じこもっているにはもったいない天気。

ハイネの思考はすぐに外出の二文字をはじき出した。

自分で服を選ぶことはまだまだ苦手だ。

いくつか用意されたものの中から、直感で決める。

上手く着れただろうかと鏡の前で左右に体を捻ってみた。

似合うのか似合わないのかわからない。

フレンに感想を聞こうと探したけれど見つからなかった。

嘘でも似合うと言われたかった。

そんな相変わらず理解できないカンジョウを回路で遊ばせながら、城を出た。

ほんの少し高いヒールは歩きにくく、不自然な格好になってしまう。

慣れた方がいいと勧められたけれど、どうも自分には合わないものだとしか思えない。

自分のためにと皆が時間を作ってくれることはとても幸せなことだと知っているけれど。


「おう、ハイネ、じゃな」


間違った形でかぶった海賊帽。

金色のおさげ髪の幼い少女がそこに立っていた。


「パティ、で、間違い、ない?」

「うむ。間違っておらぬぞ。さすが、ハイネ。記憶力はばっちりなのじゃ」


パティは親指と人差し指で丸を作った。

よくできましたと褒めてくれているのだろう。

ハイネは唇の両端に人差し指をやり、横に引っ張った。


「そんなに可愛い顔をしたところで、うちは何もあげられないのじゃ。すまんのう……」

「私、何、も、欲しく、ない、よ?」

「こういう時は残念そうにするものじゃ」

「残念……?」


少し迷い、ハイネは唇を尖らせた。

残念というより拗ねた顔。

それでもパティは合格点をくれた。

それを嬉しいと自分は感じているのだろう。


「パティ、は、何、を、して、いた、の?」

「うちはユーリに会いに来たのじゃ。生憎留守じゃったがの」

「ユーリ、に?」

「内緒の話があったのじゃ」


興味深い単語だ。

彼女が『ヒト』だったなら、その色違いの双眸を輝かせていただろう。

その空気を察したのか、パティはにーっと笑ってみせた。


「ハイネは聞きたいのか? うちらの内緒話を」

「興味、ある。どんな、話、か、聞いて、いい?」

「内緒の話じゃからのう……。まあ、ハイネじゃから、特別に教えてあげるのじゃ!」

「私、特別? ありがとう」


パティはにっこりと愛らしい笑顔を浮かべた。

ハイネの反応が嬉しかったのだろう。


「今度、お茶会を開こうと思っての」

「お茶会?」

「久しぶりにみんなで会いたいのじゃ。その時には、ハイネも来てくれるかの?」

「行って、いい、の? 行きたい」


大歓迎だと言うように、パティはその小さな手でハイネの手を握った。


「ハイネ、困った時はいつでもうちに言うのじゃ。どこにいてもどんな時でも力になるぞ? 守ってあげるのじゃ」

「ありがとう、パティ。私、も、守って、あげる、ね」

「百人力じゃの」

「百人力……。百人?」


言葉の意味を知らないわけではない。

ただ彼女は自分にそれだけの力があるのか疑問に思ったのだ。

自動人形である彼女には最高の褒め言葉だけれど。


「さて、うちはそろそろ帰るのじゃ。ハイネもフレンを心配させないうちに帰るのじゃぞ?」


そう言って小さな見た目の中身は大人な少女は帰って行った。



リンク・パティ
(小さくて頼りになるお姐さん)



2015/11/29



 

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