レイア・ロランド




初恋はいつだったのだろう。

記憶にある初めての女の子は、現在進行中の彼女だったりする。

ル・ロンド育ちの幼馴染。

明るい笑顔と逞しい行動力。

ちょっとの失敗じゃへこたれない強い女の子。

今は新米新聞記者として頑張っている。

なかなか前に進まないと膨れていた顔も可愛いなと遠い目で見つめていたのもいい思い出だ。

問題はここから。


「レイアが、最近、よそよそしいのは何でだと思う?」


パーティーメンバー(野郎限定)を宿の一室に呼び出し、そう切り出した。


「レイアが君によそよそしい? そんなことないと思うけど?」


最初に答えをくれたのは、幼馴染のジュードだ。

一人前の研究者になりやがって腹立たしい。

ただでさえ、レイアが……。

愚痴が心に溢れてきたから、空気の塊を飲み込んで次の意見を聞いてみることにした。


「おたくが何かしたんじゃないの? 無意識に怒らせたとか?」

「そんなのアルヴィンさんだけです」


わざと他人行儀に答えてみせると、アルヴィンはそっぽ向いた。

彼の意見は参考にならないので、特に問題ない。


「そうですね……」


年長者の貫禄を溢れさせながら、ローエンさんは顎に手を当てた。


「何か隠し事をされているのでは? 貴方の誕生日が近いとか」

「誕生日は全然違います。けど、隠し事……か」

「サプライズで何かしようとしている、ということか?」


ローエンさんの話に乗ってきたのは、我らが王様・ガイアスだ。

こんなことを相談するのはどうかと思うが、何か参考になる意見が聞けるかもしれない。


「何も心当たりがないんだよな。ルドガー、何か聞いてたりする?」


ずっと考え込んでいる彼に話を振ってみた。

料理の上手い彼に何かを頼っているなら、その線も有効的だ。


「いや。何も聞いていない。ただ……」

「ただ?」

「……お前が直接レイアと話をするのが一番だと思う」

「?」

「レイアはきっと二人で話をすることを望んでいる」


意味がわからない。

何かを見透かした言い方も気になる。


「そうだね。ここで悩むよりきっといいよ」

「ジュードに賛成。行って来い」

「もし嫌われたなら、慰めてあげますぞ」

「……嫌われるとか縁起が悪くないか?」

「さあ」


仲間たちに強引に背中を押されてしまった。

こうなったら、腹を括るしかない。


「レイア!」

「!! ど、どうしたの?」


やっぱり不自然だ。

口元は引きつっているし、視線は無意味に宙を舞っている。

俺の目を見ようとしない。

この場から逃げようと思案しているように見える。

心の奥底に沸々とわきあがる嫌な感情を沈めようと必死だ。

このままだと言葉の暴力になりかねない。


「……理由もなく謝るのは失礼だけど、ごめん!」


ぴしっと姿勢を正して、思い切り頭を下げた謝罪。

このまま不自然な空気と生きていくくらいなら、さっさと謝った方が気持ちいい。


「ちょっ、何で謝るの?」

「レイアの態度が……何だか冷たく感じて、それが嫌だったから……」

「誤解だよ!」

「……誤解?」

「わたしは……!」


レイアは大きく開けた口をパクパクと魚のように開閉した。

言いたい言葉が見つからないのだろうか。

それは、俺には言いにくいもの?

やっぱり何かを隠しているのか。



『最近、ドキドキしてまともに顔見れないんだけど……』

彼女がそう女性陣に相談していたことを彼は知らない。

知らせたくない。

レイアは赤くなった顔を背け、手を組む。

この手のひらに乗ってしまうような感情でないことはとっくに気づいていた。

後は一歩進むだけなのかもしれない。

仲間たちが背を押してくれたように。

心臓が喉を押さえているような気がしてならない。


「あのね」

「ん?」


ああ、神様。

勇気をください。

心の中でそう願い、溢れ出す気持ちのひとかけらを告げた。

それはお互い抱き続けていた感情だと知るのは数秒後のこと。



2016/01/16



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