星のない夜が一瞬だけある




夜になると冬の気配を強く感じる。

その冷たい風に体を震わせた。

こんな時間に呼び出すなんて、まずは一発殴ってやろうかなんて物騒なことを考えながら足を進める。

待ち合わせ場所は近くのコンビニ。

家からそう距離のない場所。

風に追われるように自然と早歩きになっていた。

目的地の前には赤い髪。

蛍光灯を弾く綺麗な髪が目立っている。

ふうと息を吐き出し、ゆっくり距離を埋めた。


「凛」

「そんな怖い顔すんなって。ほら」


彼の手には彼女お気に入りのチョコレート菓子。

ハロウィンらしくラッピングされている。

お菓子で釣ろうというのか。

心が荒く波立ちながらも鋭い視線を向けた。


「別に機嫌をとるつもりじゃねえから、受け取れ」

「……受け取ってあげる」


偉そうな言葉を吐き出してそれを手にする。

嬉しくてにこにこ笑う心を見つけられたくなくて必死に隠す。


「それで、凛。何の用? 携帯じゃダメなわけ?」

「直接会いたかったからな。電話じゃつまんねーだろ?」

「つまるとかつまらないとかじゃないって」

「お前に会いたかったんだよ」

「……」


何と答えたらいいのかわからず黙ってしまった。

そんなストレートな言葉をもらうと、心が暴れてしまって仕方ない。

自分に素直な性格をしていたら、彼に抱きついていただろう。

もしくは「私も会いたかった」と愛らしく微笑めただろうか。

ひねくれた自分は可愛げがない。

それでも素直にはなれなかった。


「……そう」


ようやく飛び出した言葉はそんな短いものでしかなかった。

素っ気ない。

嫌われたりしないだろうか。

不安が心を蝕んでいく。

自然と視線は凛から外れ、逃げていた。


「おい」

「ん?」


振り向きざま、噛みつくようにキスされた。

痛みなんて感じていないのに痛いと思ってしまった。


「もう少し、優しくできないの?」

「優しくされたいのか?」

「まあ、できるなら」

「そうか」


ニヤニヤと笑っている。

何と可愛げのない笑い方。

彼女は太陽のように笑う凛が好きなのに。それを直接伝えるか暫し悩む。


「凛は意地悪なとこより、キラキラしてるとこが好き」

「……おう」


わりと素直に飛び出した言葉に凛が言葉を詰まらせた。

勝負で言うと、これは勝ちなのかもしれない。

何の勝負かわからないが。


「空」

「ん?」


つられて見上げた夜空には瞬く星が散らばっていた。

宝石箱をひっくり返すより煌めいた星々。


「わー、やっぱり寒くなってくると綺麗だね」

「ああ」

「そうだ。目、閉じろよ」

「……何で?」


色濃く出た警戒色。

凛には予想通りだったらしく、にこりとお手本のような笑顔を見せられた。

素直に従えこのやろう、に見えたのは彼女だけか。

仕方がないから素直に従って瞳を閉じる。

空が消えた世界で優しいキスが降ってきた。



2015/11/07



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