時間を切り取るハサミ


※パートナーが男主(片仮名)で変換されます



「アンジェ、ちょうどいい所に!!」


大きな足音と共に現れたのは、ソウル。

息が切れ、肩が上下に忙しなく動いている。

そんなになるまで、何をしていたのだろう。

アンジェは持っていた紙コップを差し出す。

中身は、リンゴジュース。


「口つけてないから、飲む?」

「サンキュ」


ソウルは一気に飲み干すと、大きく息をつき、笑った。


「助かった。今度、おごるな」

「別にいいって。それより、そんなに急いでどうしたの?」

「あ、忘れる所だったぜ。マカ見なかったか?」

「マカ?」

「ちょっと確認したい事があったのに、いなくなったんだよな」

「……」


ソウルはマカを探して、走り回っていたらしい。

それが、何だか羨ましくて……悔しくて……。


「アンジェ?」

「えっ。あ……」

「どうした? どっか悪いのか?」

「ううん。そんなんじゃないよ」


曖昧に笑う事しか出来なかった。

何て下手な笑顔なんだろうと落ち込む。


「えと、マカだよね。見てないかな」

「そっか。今度の課題について、訊こうと思ったのによ」

「あ、課題ね」

「? 何だと思ったんだ?」


純粋に疑問に思ったのだろう。

首を傾げた。


「え。あのね、二人って仲良いから……」

「そうか? パートナーだから、普通じゃねぇか? お前ら程仲良いと思わないけど」

「……」


アンジェは自分のパートナーを思い浮かべ、苦い顔をした。


「その方がアンジェらしいぜ」

「あんまり嬉しくない」

「だろうな」


隠すように笑うと、ソウルはアンジェの頭に手を乗せた。


「じゃ、そろそろ行くから」

「うん」

「あ。コレ、サンキューな」


紙コップを振り、ソウルはまた走って行った。


「アンジェ、いいのか?」

「……ディオ」

「嘘の一つでもついて、独り占めすりゃいいのに」

「あのね……」


ディオの言葉にため息をついた。

何かを言おうと思ったが、諦めた。

今日は勝てそうにないから。


「ディオ」

「何だよ」

「帰るよ」

「はいはい」


つまらなさそうに返事をするディオを軽く睨んで、アンジェは歩き出した。


「アンジェ! ……と、ディオも一緒か」

「ソウル?」

「ほらっ」


少し高い位置にいる彼が投げてきたのは、缶ジュース。

何とか受け取るが、アンジェは眉を顰めた。


「炭酸じゃない!」

「あ、バレたか。思い切りびっくりしたら、元気出るかと思ったんだけどよ」

「……」

「ディオが頼りなかったら、相談に乗ってやる」

「何だと」

「ははは。じゃあな」


手を振り、ソウルは姿を消した。


「いいんじゃねぇか? ライバルって言うのも」

「ま、今はね」


缶ジュースを手のひらで転がし、少し嬉しそうにそう言った。



up 2008/09/19
移動 2016/01/26


 

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