例えば、それは片思い


※パートナーが女主(片仮名)で変換されます



「ね。ディオ」

「何だ?」


隣で夜空を見上げているマカの横顔を、見る。

いつもは強い輝きを放つ瞳が、ほんの少し不安に曇っていた。


「男ってみんなバカなの?」


唐突な質問に、言葉を見失った。

頭の中で彼女の言葉を繰り返し、消化する。


「聞いてる?」

「あ、ああ……」

「じゃ、教えてよ」

「別にみんながバカってわけじゃないと思うぜ?」


当り障りのない答えだな、と嘲笑が浮かんだ。


「じゃあ、ディオはバカ?」

「……」


そんな風にストレートに訊かれると困る。

ディオは自分がバカだとは、思わない。

そう答えていいのだろうか。

少し悩んだ後で、答えた。

彼女の問いと違う答えを。


「ソウルの事か?」

「……ディオのそういうトコ、嫌い」

「えっ!?」

「もっと、鈍くていいのに」


マカは壁にもたれ、そのままズルズルと座り込む。

足を引き寄せ、顔を埋めた。


「何かあったのか?」

「ディオは、アンジェちゃんに「貴方の為に死ぬ覚悟は出来てる」とか言われた事ある?」

「……ないな。マカはソウルに言われたわけだ」


こくり。

頭が動いた。


「ソウルだから、っていうのもあるだろうけど、アンジェは女だからな」

「女とか男とか関係ないと思う」


ディオは空を見上げる。

いくつもの星を数えるように、瞳を動かした。

まるで、答えを探すかのように……。


「大切だからな」

「え?」

「ソウルはマカの事、すごく大切なパートナーだと思ってるって事だよ」


ディオの答えにマカは顔を上げ、ゆっくり瞬きを繰り返した。

それから、笑った。


「ディオ、アリガトね」

「役に立てたか?」

「うん。ばっちり!」


立ち上がると、にかっと笑った。

ディオが好きなマカの笑顔だ。


「気をつけて帰れよ」

「うんっ!」


走って行くマカの背中。

離れていく距離。

響く足音が、胸の奥を刺した。


「ディオ」

「アンジェか」

「良かったの?」

「何が?」

「だって、ディオはマカちゃんの事」


音になる前に、慌てて手で止める。


「アンジェ、言うな」

「……ゴメン」

「今の俺は、『マカの親友』だからな」


確かにマカの事は好きだが、それ以上に二人のコンビネーションに憧れている。

ディオがアンジェと最高のパートナーになれるまで、マカとソウルを越えるまで、まだ言わない。


「ディオ! ありがとね!」


手を振るマカに応える。


「じゃあ、また明日な!」


マカが走って行った方向とは逆の道を歩いて行く。


「帰るぞ、アンジェ」

「うん」



今はこんな関係で十分だ。



例えば、それは片思いと呼べるモノ……。



up 2008/06/04
移動 2016/01/27


 

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