cake!!


それは、いつもと変わらない午後。


「あ、いた。カイト!」

「ディオ? どうしたんだ? そんなに慌てて」

「サラからデートのお誘い」


意味ありげに笑うディオに、カイトは溜め息を吐いた。


「……禁止、されてなかったか?」

「うむ。きちんと食事するまでは、禁止だと言っておったぞ」


サラの言う『デート』がケーキを食べに行く事だと分かったから、カイトは確認したのだ。

カイトの背にくっついているスイヒも彼の意見に同意する。


「今日は特別なんだってさ」

「特別?」

「ちゃんとガウェインさんの許可もらってるし」


彼が許可したのなら、気にする必要はないだろう。


「お待たせ!」


身支度を整えたサラがディオの背に飛びついた。


「サラ、痛い」

「ごめんごめん」


悪びれずに笑うサラ。

そんな彼女も可愛いな……と思ったのは、誰にも内緒だとディオは苦笑した。


「早く食べに行こ!」

「そんなに急がなくても、ケーキは逃げたりしないぞ?」

「分かってないな〜、ディオは」


チッチッチッとサラは指を振った。


「カイトは分かるよね」

「えと……」

「我は分かるぞ」

「さっすが、スイヒ!」


盛り上がる二人?を見てディオとカイトは笑った。


「そろそろ行こうぜ」


楽しげに話すサラとスイヒを促し、街へ降りた。



「どれにしようかな〜」


並んだケーキを前に瞳を輝かせるサラ。

その隣で「甘いモノは……」とか呟きながら、選ぶスイヒ。

チョコレート好きのカイトも楽しそうにケーキを眺めている。

ディオはそんな彼らを見ていた。


「サラ、決まったのか?」

「あ、ディオ。取り敢えず、コレにするかアレにするかで悩んでるのよ」


ケーキを指差した後で、また考え込んでしまった。


「両方食べたら良いんじゃないのか?」

「ダメ。ガウェインに一個だけって言われてるの」

「じゃあ、コレにしろよ」

「え……?」


ディオがあっさりそれを指差した。


「でも、アレも……」

「俺はアレにする」

「……嫌がらせ?」


じーっと睨むように見上げるサラ。


「サラは両方食べたいんだろ?」

「うん」

「でも、一個って約束なんだよな?」

「うん」

「だから……」


支払いを済ませ、ケーキを受け取る。


「半分ずつ食べようぜ」

「……ディオにしては、よく考えたわね」

「バカにしてるだろ。これ全部食うぞ」

「ごめんなさいっ」


素直に謝るサラが可愛くて、自然に笑みが浮かんでいた。


「カイト、決まったか?」

「ああ」


店の一番角の席。

三人はケーキと紅茶を持って座った。


「それにしても、よく許してくれたな」

「何? あ、ケーキの事?」


幸せそうに食べるサラにカイトが尋ねた。


「ちょっとした交換条件……かな」

「交換条件?」


それは聞いていなかった。

ディオは詳しく聞こうとしたが、やめた。

何となく想像できたのと、楽しい時間を大切にしたかったから。



「美味しかったぁ」


素敵なティータイムを終え、彼らは幽霊船へと帰る。

明日からはまた、戦いの日々。



up 2007/04/25
移動 2016/01/25



*おまけ*



後日。


「やだ。いらない!」

「姫、約束は守らなければいけませんよ」

「だって〜」


サラとガウェインの声が聞こえ、ディオは部屋を覗いた。

一枚のお皿を前に泣きそうなサラ。

そんな彼女と一緒にいるのは、ガウェインとテレーゼ。


「何してるんだ?」


うっかり声をかけてしまった。

ディオの登場にサラは瞳を輝かせた。


「ディオ!」

「ディオくんに助けを求めても無駄ですからね」

「そうですよ。サラさん、めっ、ですよ」


何となく事情は飲み込めた。


「交換条件はこれか」


お皿には、魚と野菜を(たっぷり)使った料理。

側にある(大きめの)グラスには牛乳。


「さぁ、姫」

「サラさん」


柔らかな笑みを浮かべる二人が少しだけ怖い。


「ディオ〜」


今にも泣き出しそうなサラ。

助けてあげられるなら、そうしたい。


「約束したんだろ?」

「う……」

「これを食べないと、ケーキは絶対食べさせませんからね」

「ディオさんとのデートも禁止です」

「そんな〜!!」


サラは料理を睨んで、フォークを手にした。


「ディオくん、申し訳ないのですが、席を外して頂けますか?」

「そうですね。サラさんが甘えてしまいそうなので」

「……分かった」


ドアを閉める時、サラの声が聞こえたような気がした。

が、彼女の為を思い、ディオは自室へ足を向けた。

再びサラにデートに誘われる日は近い……?




 

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