時々爆発


「カイトって、洋菓子得意分野じゃなかったっけ?」


ふと顔を向ければ、恥ずかしそうに笑う彼の顔。

そして、黒焦げになったお菓子。

アンジェが何か作ってとカイトの部屋を訪れたのは、二時間前。

カイトは快く引き受けてくれ、二人はキッチンへ。

そして……。


「アンジェ」

「ん?」

「今日は誰か他の人に頼んだ方がいいかも」

「えー……。カイトのお菓子が食べたかったのにな」

「!!」


アンジェは甘い物が好き。

特にチョコレートが大好きで、カイトとよく食べに行ったりしている。

好みが似ているから、お互いに情報交換をしたり、新商品の試食会をしたりしていた。

友達というか、仲間というか、そんな関係。


「……」


オーブンを開けるのは、これで五回目。

黒い煙が溢れてきた。

美味しいお菓子になるはずだったソレは、真っ黒で原形をとどめていなかった。


「だ……大丈夫だよ、カイト。ほら、失敗は成功の」

「アンジェ、やっぱり今日は……」

「もう一回、ね?」


アンジェに頼まれ、カイトは小麦粉の袋を手に……。


「アンジェ、ゴメン。材料切れみたいだ」

「じゃあ、買いに行こ。早く行かないと!!」


アンジェはカイトの手をとり、キッチンを出る。


「ちょっと待って、アンジェ」

「何? 急がないと」

「俺、着替えたいんだけど……」


エプロンと三角巾をつけたまま。

この格好で外に出るのは、確かに恥ずかしい。

アンジェはカイトの部屋の前で、彼の準備が終わるのを待った。



***



「ねえ、カイト」


並んで歩く二人。

時間が中途半端なせいか、人が少ない。


「何?」

「何か、緊張してない?」

「えっ!?」

「いつものカイトと少し違うような気がしたから」

「……ごめん」


隣を歩くカイトが肩を落とした。

何か悪い事を言っただろうかと不安になる。


「あのね、いつもと一緒だからね」

「あ、えと……そういうんじゃないけど……」

「?」


店に到着し、買い物が始まった為、その話はここで途切れた。

失敗する場合も考えて、普段より多く買い物をする。

その量に二人は顔を見合わせて笑った。


「アンジェ」

「何?」

「ほら」


カイトが指差したのは、チョコレート菓子が並ぶ棚。

そこには、新発売の文字がついた商品が並んでいた。


「買おうか」

「今日はいい」

「何で?」

「だって、今食べたいのは、カイトの手作りだから」

「……じゃあ、早く帰ろうか」

「うん!」



キッチンから聞こえる爆発音。



それは、君に捧げるラブソング?



up 2008/08/08
移動 2016/01/24


ヴェスペリア発売記念声ネタ夢だったみたいです。


 

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