等身大の愛情表現
そんな遠回しな言い方じゃ分からない。
その行動の意味が分からない。
お願い、はっきり言ってよ。
私といると、疲れる?
***
「も〜ヤだ!!」
持っていたシャーペンを投げる。
机の上をコロコロと転がるソレを見ながら、突っ伏した。
「杏樹……」
「はいはい。私はバカですよ。集中力ないですよ。やる気もないし……」
「はぁ……」
歩の溜め息が聞こえたから、口を噤んだ。
何よ、わざわざ言わなくても分かってるとか思ってるんでしょ?
私は歩とは違うもん。
「杏樹、後10分したら休憩しよう」
「い・や・だ」
「……」
出された課題を教えてもらってる最中。
歩の説明は分かりやすいと思う。
その辺の先生なんかよりずっと。
でも、久しぶりの“二人きり”が勉強会なんて嫌なんですけど。
何度かデートに誘ったけど断られ、勉強教えてと言ってようやく二人で会えた。
私といるの嫌なのかな……。
私、最近文句しか言わないし。
一緒にいても疲れるだけなのかな……。
「杏樹」
返事する気になれない。
だって……返事したら、泣いてるのがバレるじゃない。
「杏樹」
さっきと違う声音で、どこか優しい雰囲気のある声で私を呼ぶ。
それはどうして?
でも、返事はしない。
顔を上げたら、泣いてるのがバレるじゃない。
「……」
溜め息と共に歩が立ち上がる気配。
え?
帰っちゃうの?
「歩っ!!」
それが嫌だったから、泣いてるとかどうとか関係なく、叫んでた。
「……何泣いてるんだよ」
「それは……」
歩はもう一度座ると、真正面から私を見た。
その瞳から逸らしたい……。
でも、見ていたい。
「……嫌われたのかと思った」
小さな声で歩がそう言った。
「え?」
「杏樹に嫌われたのかと思った」
今度ははっきりとそう言った。
私が歩を嫌う?
その逆なんじゃないの?
「何……で?」
「え?」
「私が歩を嫌う訳ない。何で、何でそんな事言うの? 歩が私の事を嫌ってたんじゃないの?」
言いたい事がまとまらなくて、でも、今言わないと、ダメな気がして。
「杏樹……」
「だって、デートに誘っても断るし、私といてもほとんど喋らないし、電話だってメールだってやらないし……」
「杏樹」
歩の指が溢れた私の涙を拭った。
「だってだって……」
「そんな風に追いつめて、ごめん」
「え……?」
歩は苦しそうな顔をしていた。
「杏樹に迷惑をかけたくなかった」
「迷惑?」
「今は、詳しく言えないけど……」
「電話とかメールしないのは……どうして?」
「電話やメールをしないのは、会いたくて我慢できなくなるから。それと……杏樹の事が好きだから、どんな態度をとればいいのか分からない」
何か……うまく言えないけど、すごく嬉しかった。
私、嫌われてないんだよね?
「歩。私……歩の事が大好き。だから、迷惑とかそんな事考えないでよ」
「杏樹……」
「お願い。ずっと側にいさせて」
私は、子供だから。
難しい事は分からない。
ただ歩の側にいたい。
それだけ。
それだけだけど、
私の気持ち、分かってよね?
up 2005/02/15
移動 2016/01/17
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