最高のお守り
『受験生』という肩書きになって、早1年。
これまでの自分を試される日まで、もう少し。
***
勉強嫌いのあたしが、珍しく頑張った。
でも、自信なんてない。
問題集を開けば、分からない問題ばかり。
不安だけが募る毎日。
受験勉強ってどんな風にやればいいの?
……そもそも、勉強ってどんなにするものだっけ?
勉強をしようと机に向かっても、頭に入らない。
何だか、泣きたくなる。
怖かった……。
「杏樹」
「はい?」
名前を呼ばれた。
顔を上げ、声をした方を向いた途端に、デコピンされた。
「……っ」
かなり、痛かった。
「そこに力が入りすぎてる」
「歩〜っ……」
「もっと力抜け。無駄な力を使うな」
「え……?」
あの歩が笑ったように見えた。
「杏樹なら大丈夫だ。肩の力を抜いて。ほら、深呼吸」
言われた通りにする。
「ゆっくり」
「はぁ〜……」
少し、落ち着いたような気がした。
「受験なんか皆緊張するに決まってるだろ。不安じゃない奴なんかいないさ」
「……うん」
「受かる事に必要なのは、勉強だけじゃない。どれだけいつもの自分でいられるかだ」
何だか……心が軽くなった。
歩はあたしの額を撫でた。
さっきデコピンされたトコロ。
「杏樹は杏樹だから。焦らずゆっくりな」
「うん」
歩の手が離れた。
ちょっと名残惜しい気がした。
「合格通知を貰ったら、祝ってやるよ」
「ホント!?」
「ああ」
不安なのは、あたしだけじゃない。
大丈夫。
こんなあたしだけど、今は自分を信じよう。
ゆっくり、
深呼吸をして、
頑張ろう。
up 2005/01/16
移動 2008/01/17
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