速度をあげて


※微ギャグ?



自由時間。

ユーリは特に予定もなく、街をぶらぶらと歩いていた。


「お願い、ラピード」


切羽詰まった声が聞こえる。

アンジェの声だ。

顔を向けると、完全にお休み態勢のラピードに頭を下げているアンジェを見つけた。

何度か同じ言葉を繰り返しているようだが、ラピードは興味がないようで反応はない。

そんなラピードがユーリに気づいたのか、顔を上げた。

その視線を追って、アンジェもユーリを見る。


「ユーリ」

「ああ。アンジェ、何してるんだ?」


そう尋ねれば、アンジェはユーリとラピードを見比べた。

何度も。

そして、頷いた。


「ユーリでもいいや」

「……」


そんな投げやりに言われても困る。

困るというか、ラピードが無理だから、自分で手を打たれた感じが、嫌だ。


「足速くなる方法を教えて」


両手をぱちんと合わせ、頭を下げる。


「……足が、速くなる……方法?」
 
「そう」

「そんなに足遅くないだろ?」

「今のままじゃ、ダメなの! アイツから逃げられないから」

「……アイツ?」


ユーリは“アイツ”が誰なのか分からず、繰り返した。

アンジェは視線を外し、憎々しく言った。


「セクハラ親父」

「レイヴンか」


そういえば、最近よく二人が走り回っているのを、見かける。

コミュニケーションの一種だと思っていた。

他のメンバーも、微笑ましく見守っていた気がするし。


「別に逃げなくていいんじゃないか? 楽しそうだし」

「ユーリ〜」

「……悪かった」

「とにかく、協力してよ」


“お願い”と縋るように見上げてくるアンジェ。

その瞳は苦手だったりする。


「……分かった。オレに出来る事なら、協力する」

「ありがとー! じゃ、早速……」



その時。



「アンジェちゃ〜ん!」


大きな声で名前を呼びながら、近づいてくるレイヴン。

何となく花を散らしながら走っているように見えるのは、気のせいだろうか。

気のせいに違いない。
 
絶対に気のせいだ。


「ユーリ、ゴメン」

「え?」


背中を思い切り蹴られる。

その後、ユーリとレイヴンは衝突事故を起こした。

頭やら腕やらが痛い。

避けられなかった自分に腹が立ちながら、振り返った。


「アンジェ、何して……いねぇし」

「なあ」

「ん?」


ユーリと同じように、ぶつけた体のあちこちを撫でながら、レイヴンは声をかけた。


「アンジェちゃんと付き合ってたりするのか?」

「……はい?」


一体今何と言われた。

それを理解するのに、少し時間がかかってしまった。


「ありえねぇだろ」

「アンジェちゃんの魅力に気づかないとは、まだまだだな」

「はいはい」


まともに話になりそうにないので、軽く流す。


「絶対に負けないからな」

「はいはい」

「なるほど、略奪愛か」


何か嬉しそうに頷いている。

気持ち悪いくらい、笑っている。
 
さっき思い切り頭をぶつけたのではないか、と疑うほどに。

まあ、本人が幸せなら問題ないだろう。

さり気なく自分が巻き込まれているのは、不愉快だが。

何だかんだでお似合いなんじゃないか、と思いながら、ユーリはラピードと共にその場を離れた。



up 2008/09/25
移動 2016/01/16


 

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