お手をどうぞ、お姫様


※未プレイ時作品
※本編前設定?



「ディオ! ようやく見つけました!」

「エステリーゼ様!?」


珍しく雑用をしていた所、彼女に声をかけられた。

走ってきたらしく、胸に手を置き、肩で息をしている。

あまりに苦しそうだったので、触れようと手を伸ばす。

が、見えない壁に阻まれ、届く前に落ちた。


「ディオ、訊きたい事があるんです」

「私に、ですか?」

「はい。多分、ディオしか知らない事だと思うので」

「……?」


何を尋ねられるのだろう。

心当たりがないディオは首を傾げた。

彼女は、少し腰を落としてディオを見上げた。


「最近、フレンの様子がおかしいのですが、何か知りません?」

「……」


そのまま固まってしまった。

風に逆らうように、髪も固まってしまったかのような、奇妙な感覚。

それは、初めて感じた物だった。

そして、気づく。



(俺は、エステリーゼ様の口からアイツの名前を聞くのが嫌なんだ)



「あの、ディオ?」


ピクリとも動かず、時間を止めてしまったディオを心配するように、名前を呼んだ。

その声に、時間が戻ってくる。


「あ、すみません。ところで、何故そのような事を私に?」

「ディオはフレンと仲が良いようなので。……違いました?」

「……どちらかと言えば、それなりに親しい方だと思います」


不安げに落ちた瞳が、輝きを取り戻す。

その瞳は、先程の質問の答えを急かしているようにも見えた。


「……」


何と答えるべきか迷う。

多分、自分は彼女の望む答えを知っている。

少し考えて、口を開いた。


「そうですね。エステリーゼ様が、私の気持ちに気づいてくだされば、お教えしましょう」

「ディオの気持ち……? それは、何です?」

「それに気づいてください」


よく分からないと考え始める彼女の前に手を出す。


「帰りましょう」

「……分かりました。絶対に、ディオの気持ちに気づいてみせますから!」

「期待しています」


力を入れてそう言う彼女に、ディオは優しく微笑んだ。



up 2008/08/25
移動 2016/01/16


 

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